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コラム 『東洋医学って何?』 |
| ツボ療法を超えて(1) 2004年9月23日 |
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昨今テレビや雑誌で鍼灸医療が取り上げらることが多くある。こういった特集が組まれるのは、薬に頼らず自己治癒力を高めることで強い身体を作っていこうという意識が広まっていることの現われかもしれない。鍼灸医療に携わる者として、このように鍼灸の世界が多くの人に紹介されること、それ自体は喜ばしいことである。 しかし、こういった特集の内容を見るにつけ、プロの鍼灸師としては喜んでばかりもいられないと思うこともある。それは、特集の内容のほとんどが、「咳には○○のツボ」「頭痛には○○のツボ」というように、ツボと病気や症状を短絡的に結びつけたものになっていることである。これではあまりに短絡的過ぎであり、本来の鍼灸治療の本質が伝わってこない。これでは、鍼灸医療はツボを押すだけ、という印象になってしまう。さらいに悪いことに、プロである鍼灸師の多くがこれと大差のないことを治療と称してやっている・・・。 もちろん鍼灸医学とツボは切っても切れない関係であり、ツボなくしては治療は出来ない。しかし、ツボは病気や症状と直結するようなものではない。病気の側から考えてもわかることだが、病気の成り立ちは複雑で、深く慢性になっているものほど病の根は深い。それほど深い病が、ツボを押しただけ、つぼに鍼をしただけで軽減されるとはかなり乱暴な話ではないだろうか。 ここを押したらこの症状が軽減されます式の、短絡的に症状や病名に合わせてツボを使用するのは、単にツボを使っただけの「ツボ療法」でしかない。重要なのは、治療者がいかに患者の病態を把握し、病因を退散させるか、そしてそのためにはいかにツボを運用するか、ということである。 ツボというものは押されると気持ち良いものである。そういった面からもツボが直感的にもわかりやすく理解され、一般的になりやすいのだが、わかりやすいゆえにその理解は「ツボ療法」程度にとどまっている。 今回エッセイを綴るにあたり、しばらく「ツボ療法を超えて」と題し、「ツボ療法」ではない鍼灸の本質を述べていきたいと思う。しばしお付き合いをいただければと思う次第である。 ▲このページの一番上に戻る 鍼灸治療のお申し込みは → こちら |
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| ツボ療法を超えて(2) 2004年9月30日 |
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先日ある患者さんの治療をしている最中に、「瀬戸先生、やる気がぜんぜんでないので、やる気の出るツボに鍼をしてくれ。」と言われた。 私は当院が推奨する鍼灸の原点である「本治法(ほんちほう)」を施した後、「わかりました・・・じゃあ、ここのツボがそうですからね・・・」といってツボのない場所に手を運び、さらに鍼を刺入せずに鍼を刺すふりだけをした。するとこの患者さんは「ああ、すっきりした。なんか元気が出てきました。」と答えたのである。しかし鍼もツボも使っていないのだから、これはプラセボ効果(暗示)であり、鍼やツボの効果ではない。 私は患者さんに「今ほんとは鍼なんて刺してませんよ。それに触った箇所もツボとは何も関係のないところです・・・」と言った。患者さんは「私を素人だと思って適当な治療をしたのですか!」と怒ってしまい、無言のまま私は患者さんの家を後にした。 これでこの患者さんを診ることはもうないだろうなと思ったのだが、後日再び予約の電話が入り治療をしに行った。すると患者さんはにこやかな顔で、「先日は失礼しました。先生に怒って大きな声を出した後、気持ちがすっきりしたんです・・・。食欲も出始めて・・・。」と言われた。私は何も気にせず「ああ、そうですか、それはよかったですね。」と答えていつもの本治法(ほんちほう)を始めた。 この患者さんの病因は、最近落ち込むような出来事があり、そのことが忘れられずずっと悲観して、感情が乱れために起こったのである。体調を戻すためには、この悲しみを怒りや声を出すことで癒す必要があり(右表参照)、それを補うための食欲が出なくてはいけなかったのである。 この関係は東洋医学の五行論と診断方法から導かれるもので、しっかりとした学問体系を基にしている。このケースで私はそこまで考えて患者さんを怒らせたわけではないのだが、ツボ療法がいかに曖昧なものであるかをわかっていただこうとしたことが、結果的に患者さんを治癒に向かわせ、同時に東洋医学の良さを実感してもらえたことは、災い転じて福となす、であったと胸をなでおろした。そして学問を基にした治療体系である本治法は頼りがいのある治療法であることを再認識したのである。 ▲このページの一番上に戻る 鍼灸治療のお申し込みは → こちら |
五行と五臓・感情の関係
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| ツボ療法を超えて(3) 2004年10月5日 |
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「そもそもツボって何だろうか?」という疑問は古くて新しい問題である。大学や研究所の研究では、神経生理学の立場から解明を試みたりと、ツボ解明のための科学的試行錯誤が行われている。しかし、未だにその全てを明快に解明するには至っていない。人体は不思議なことばかりで、まさに「身体は小宇宙」ということを実感する。 古来の人々はどのようにツボを発見していったのであろうか?おそらく最初は、狩りに出かけ足をくじいたような外傷時に、その痛い個所に手を当てたり、その周囲に手を置いたりして痛みがやわらぐことを経験的に学んでいったのが初めだろう。そして患部に手を当てることが、自然と「手当て」という言葉につながっていった。さらには、手当ての「手」は、現代のように細い銀鍼を加工する技術がない頃は、 へん石と呼ばれる先の尖った石や、松葉、魚の骨などが治療道具に移行していったのであろうと言われている。そういった外傷の治療をしていくうちに、お腹が痛いとき、咳が止まらないとき、といった様々な内科的な身体の不調にも自然と手当てを応用していったのであろう。 ツボ療法はそういった手当て療法の原点かもしれない。「ツボ療法(1)(2)」ではツボ療法の曖昧さを綴ったが、こういった「手当て」の原点を考えると、ツボ療法がまるで意味のないものではない。昔から言われているように「胃には足三里」「面ちょうには合谷」というように、特異的に著効を現すツボも確かに存在する。古医書の中にもそういったツボの効能を集めた本や項目がないわけでもない。 しかし、「身体は小宇宙」、摩訶不思議なものである。広大無辺の神秘な世界を単なるツボ療法、手当ての領域にとどめておいては、臨床家としての進歩や楽しみがない。昔の鍼医者たちも、ツボだけで病気が治るわけではないことを痛切に実感しておられたようで、それは、病因や病気の成り立ち、身体の陰陽、そして身体と自然や季節をつなげる思想体系などといった、ツボ以外の記述や解説が、ツボの解説よりもはるかに多いことを見ても分かることである。そして、「身体や病を明らかにするのはこれでは不十分で、後世の人々にさらなる研究と発見を期待する」という文章を目にすることもある。 東洋医学は、古くて新しい問題がたくさんある。自然と人間の身体の関係を観察した先人の学問を、臨床の中に活かしていくことが、ツボ療法を超えていく指針の一つであると痛感している。 ▲このページの一番上に戻る 鍼灸治療のお申し込みは → こちら |
| ツボ療法を超えて(4) 2004年11月6日 |
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先日風邪をひいた患者さんを治療した。今年(2004年)は春先から天気が不順で、夏の酷暑や台風の襲来などで季節の巡りに身体がついていけない方が多い。そこでこの患者さんのようにちょっとしたことで風邪をひく方も増えている。 「風邪ひいちゃって、肩が凝ってるんですよ〜〜。首もこってるし〜。」と患者さんが症状を訴える。 「そうですかそれは辛いですよね〜〜。」と私は答えて、いつも通り本治法を施していった。お腹の状態や皮膚の状態などを診て、身体の状況を診る。その診察の結果、飲食をバランスよく摂っておらず、さらに冷たいものを摂って胃腸を冷やしたようであった。その隙に身体に風邪が入ったのであろう。治療方針は、本治法で身体を温め、食欲を出してあげること(もちろん治療後バランスのいい食事を摂ることを患者さんに指導)であった。身体に飲食物の栄養をめぐらせ体力をつけていき、身体が本来持っている自己治癒力で風邪を追い出すということである。 患者さんにとっての主な訴えは肩こり、首のコリであったが、治療方針は風邪を身体の外に追い出すことであり、主な訴えである肩や首には鍼を一切しない。それは身体の不調の原因は風邪であったので、治療対象を風邪にし、風邪を追い出せば肩こりも首のコリ症状もなくなるからである。もし、身体の全身が表現している状態を診ずに、肩や首だけを治療対象にして、そこにだけ鍼をしたら、症状が取れるどころかより凝りは増し、風邪が進行していった可能性もあったかもしれない。 治療後患者さんは身体が楽になったと言って気分も明るくなったようであった。 そして後日治療をしたときには、「鍼って風邪にも効くんですね〜」とおっしゃっていた。鍼灸治療を学ぶものとして、鍼灸が風邪によく効くということは周知のことであるが、一般的にはまだその認識は浅い。今回肩こり、首のコリを訴えて治療を受けた患者さんに、鍼灸治療のまだあまり知られていない側面を実感していただけたことは、施術者としてもとても嬉しいことであった。いうまでもなく、この患者さんは風邪のときは病院ではなく鍼灸治療を選択してくれている。 ※ インフルエンザは風邪ではないので病院に行くことをお勧めします。 ▲このページの一番上に戻る |
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| ツボ療法を超えて(5) 2004年11月6日 |
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| 「ツボ療法を超えて」と題して4回書いてきました。いくつかの実例を挙げながらツボを安易に使わない、病名−ツボ−治療は直結しない、ということを述べてきました。それでは、ツボ療法を超えたところで、どんな治療をするのか?ということをこの章のまとめに書きたいと思います。 東洋医学の根本には、東洋哲学があります。その東洋哲学とは、陰陽理論、五行理論などをベースにした自然観察の集大成であります。そしてそれをベースにして病気の治療に応用されていったのが東洋医学です。人間は自然の空間で呼吸し、生活し、自然の恵みを摂取して生きている自然の中の存在です。これを東洋哲学では「天・地・人」と呼びますが、「天・地・人」はそれぞれが独立しているのではなく、お互いが相関し、お互いが影響を与え与えられる存在です。このような全体を見る視点から身体、病気を観察していくのが東洋医学です。どうしてこのような病になったのか?というのを大きな視点で捉え、そしてその原因を全体の力で取り除くことが東洋医学の目的とするところです。 自然には木火土金水という5つの要素があり、身体の中には肝心脾肺腎という五臓(ごぞう)が対応して存在しています(「ツボ療法を超えて(2)」の下図参照)。自然においても、台風などで水が強い時には土砂を押し流していくように、身体の中でも五臓のバランスが崩れた時には身体の不調、病といった姿で表現されます。流された土砂を取り除き、土手をしっかり築けばまた川の流れが戻るように、自然哲学から応用された理論、学問を基にして、五臓のバランスを修復していくことが病気を治す治療なのです。 このように、身体全体の病理、生理を十分把握した上で五臓の正気を調整することが、部分の調整につながっていきます。しっかりした木を育てるためには、まずはしっかりした根っこを育てる必要があります。大地に力強く根を張った木は、とてもしっかりした幹で、つやのある葉っぱや花、果実を見せてくれますし、ちょっとやそっとの風や雨では倒れることはありません。同様にして、我々の身体ももまた、しっかりした根っこを築く必要があります。鍼灸治療の真髄である「本治法(ほんちほう)」とは、この肝心な根っこをしっかり調える治療方法です。人間の根っこは五臓六腑(ごぞうろっぷ)です。そのバランスを調整し、修復していくことが病気の治癒であり、病気に負けない身体作りということになります。 単にツボを押すだけでは病気は治りません。病気を治すためには、身体全体をよく観察し、今現在その人の身体に必要なツボを選択し、五臓六腑を調整していく「本治法」こそが必要なのです。 ▲このページの一番上に戻る 鍼灸治療のお申し込みは → こちら |
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