小児鍼(3) 子供の環境について
2005年8月12日(加筆2009年4月13日)
現代社会はストレス社会と言われています。日々の生活は目まぐるしい変化があり、その中で生活に追われることも少なくありません。こういったストレス社会の影響は、大人に対してだけではなく、子供にも反映されております。子供は自分で環境を選択することは出来ませんので、親である大人、そして社会全体がその環境を整えてあげる必要があると思います。
その子供の環境を考える上で大切になるのは、子供が親(大人社会)から受ける愛情ではないでしょうか。子供は愛情を栄養源に成長していきますが、その愛情を、心身ともに感じるときの基本になるのは、日ごろのスキンシップと食事にあります。
まずスキンシップですが、肌を触れ合うことと、会話をすること(話しかけてあげること)です。子供の頃のスキンシップはその後の成長過程に大きな影響を与えるといわれています。それは、全身の神経系統が未発達な赤ちゃん・子供にとっては、肌に触れる刺激によってその神経系統を発達させていくからです。特にこの幼児期は脳神経が発達、完成していく大切な時期ですので、健全な成長のために心地よい刺激をしてあげることが重要になります。
この肌に触れる皮膚からの神経系への刺激は、漢方医学(東洋医学)では「肺」が主っているとされており、「肺」の働きは本能や自然な気配りにつながっていくと漢方医学では考えています。
そして次に会話(人と話すこと・声をかけてのコミュニケーション)をして言葉を発するということは、漢方医学でいうところの「心」(精神の宿るところ) を育むことにつながります。未発達ではありますが、何かを伝えようとする子供の欲求を十分汲み取ってあげること、そしてそれに対してコミュニケーションを取ってあげることは、心の発展にいい影響を与えますので、子供の言葉に耳を傾けてあげることも大切なことになります。
最後に三つ目の食事ですが、暖かい手作りの食事には家庭の愛情が表現されています。出来合いの加工食品は味も濃く、保存料も入っているものが多くありますので、どことなく人工的なものになってしまいます。最近では添加物の少ない加工食品も増えておりますが、やはり手間ひまのかかった家庭の味にはかなわないのではないでしょうか。昔から「食事の隠し味は愛情」とはよくいったもので、子供はそういう言ったところを敏感に感じ取っております。そして食欲が安定するということは「脾・胃」を充実させることにつながります。脾・胃は後天の気と呼ばれる生命活動の日々のエネルギーを供給するところですので、とても重要になります。
以上のように見ていきますと、スキンシップ(肺)、会話(心)、食事(脾・胃)の三つの活動が充実してきますと、各活動に配当される臓器もそれにつれてしっかりと正気を満たすことができます。このようにそれぞれの生気が充実していった結果として、生命力の根源である精(腎)もまた補充されていくことになります。この精(腎)は、成長、発育、智力にも関連したものですので、常日頃から気をつけておきたいところでもあります。
その他としては、両親の精神的ストレスもなるべく軽減しておくということも大切になります。子供は感じているストレスを言葉で表現することは出来ないため、その不快感を病気や身体の症状として表現としていることも多くあります。親の子育てへの過度な緊張が子供に伝わったり、かえって子供は心底安らげないということもあるようです。鍼によって身体を緩め、体質を改善するとともに、親として子供の姿をよく観察して、子供のための環境を整えてあげることが必要になります。
小児鍼は子供とのスキンシップを大切にする治療方法であり、食欲と消化力をつけていく治療方法です。親御さん(大人社会)の愛情を基礎としながら、子供の成長に必要なお手伝いをする療法が小児鍼です。
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鍼灸治療の効用・適応