第17回 甘いもの
2005年12月15日(2009年11月28日加筆)
表参道・青山・源保堂鍼灸院の周辺には、おいしいスウィーツの名店やカフェが目白押しであります。雑誌などにも特集が組まれ、曜日、時間を問わずお店は人でいっぱいです。おいしいスウィーツのお店は、表参道になくてはならない存在です。 しかし、この甘いものは、こと身体にとっては厄介なものです。美味しいゆえに、ぜひとも長く付き合えるように、このコラムを読んでいただき、甘いものとの付き合い方を一考していただきたいと思います。
甘いものというとまず肥満を思い浮かべるでしょう。しかし甘いものの摂り過ぎが健康に大敵なのは、それだけではありません。東洋医学的に見ると、甘いものは大事な「腎」を傷めることになるので注意が必要です・・・・。
それは、下の図のような五行の関係があるからです。この図の赤い矢印に注目してください。これは「土剋水(どこくすい)」と呼ぶ関係で、自然界で土が水を堰き止めるように、五行で土に分類される甘いものが、水である腎をいじめてしまう関係となってしまうのです。端的に言えば、甘いものを食べ過ぎることによって、腎が壊れてしまうのです。
それではその腎はどうして重要なのかということを説明してみます。
腎には「先天の気」と呼ばれる自分の生命力が蓄えられていると考えられています。その先天の気とは「精」とも呼ばれ、精気、精神の「精」にもつながり、また、腎は成長、発育、生殖、智力をも兼ね備えた重要な臓器と東洋医学では考えています。このような重要な臓器である腎が甘いもので壊されてしまうと、持って生まれた生命力が落ちることになり、身体全体の調子が狂うことになります。
特に「精神」の「精」に関して述べてみます。最近ではテレビのCMや健康番組で「砂糖は脳の栄養源」という紹介がされたりもしていますが、東洋医学的に考えると全くの逆になります。精神の「精」を甘いものが壊していくのですから、脳の栄養どころか、脳の発育や脳の健康には良くないということになります。疲れたときに甘いものを食べてほっとするのは、甘味によって脳が麻痺しているに過ぎず、けっして栄養が入っているわけではありません。西洋医学的に見ても、脳の信号を送る伝達物質はアドレナリンやノルアドレナリンなどであり、これは砂糖と全く関係がないのは明らかなのですが、そのあたりは全く触れずに「脳の栄養源」という言葉だけが先行してしまっている感があります。
実際に心理学者ザイヤーの研究によると、甘いものを食べてから20分くらいは幸福感とやる気に満ち溢れるそうですが、1時間後には食べる前よりも不幸感が増すという結果が出たそうです。そしてこの不幸感を消すために、さらにまた甘いものが食べたくなるという悪循環に陥るそうです。
昔は甘いものは貴重品で、時々しか食べられなかったからこそ身体は適度な量の甘味を良い刺激として捉えたと思います。しかし現代のように何を食べても、何を飲んでも甘味が入っているような状況では、甘いものが過剰な刺激となって腎・精を傷めていると考えられます。そしてこの甘みに加えて、さらに冷たいものも増えており、それによって胃が冷えてしまい、先天の気である腎だけではなく、後天の気である胃も壊れてしまっているのが多くの人の状況ではないでしょうか。ニートや引きこもりと呼ばれる最近の若年層の精神的な無気力の中には、このような甘いものの摂り過ぎからきているものも少なくないと思います。
身体を壊すほどに甘いものを食べ過ぎて、美味しいものが食べられなくなるよりも、適度に付き合い、長く美味しいものと付き合うことのほうが人生が豊かになるのではないかと思います。日ごろの生活の甘いものを見直してみてはいかがでしょうか。
【資料】
土剋水という関係で、甘いものが腎を壊していきます。

五行・五臓・五味の関係は下の表のようになります。
| 五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
| 五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
| 五味 | 酸 | 苦 | 甘 | 辛 | 鹹 |
| 五行・五臓にはこのように「味」が配当されています。この中でも「土剋水」の関係が一番強烈に身体に影響をように思います。 | |||||
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鍼灸治療の効用・適応