第18回 お肉
2006年1月15日(2009年11月28日加筆)
前回の「甘いもの」に引き続き、今回も食養生について。
今回のテーマは「お肉」です。
自然志向の方の中には、「お肉」を食べることを避けている方も少なくないと思います。「お肉を食べると血液が汚れる」、「身体にお肉の毒素がたまる」といった理由でお肉を食べないという方(またはそのようなイメージをお肉に持っている方)もいらっしゃるかと思います。確かにお肉だけを食べ、野菜をほとんど食べないというのでは問題がありますが、お肉1に対して野菜を2、3倍食べればお肉の毒素は中和されますので、バランスのいい食事をしていれば極端に避ける必要はないと思います。むしろ常にストレスが多いこの現代社会においては、ストレスに抵抗するための力を保持し、補給するためにも、お肉というエネルギー源の摂取は不可欠だと思います。筋肉や皮膚など、身体の組織のほとんどはたんぱく質でできていますので、そのことからも、たんぱく質をお肉で補うことにはなんら問題はないと思います。
それでは東洋医学では「お肉」をどのように捉えているのでしょうか。ここでもまた原典である『黄帝内経』を参考にしてみます。『黄帝内経・素問』の「蔵気法時論」の後半を参照にしてみますと、以下のように食材が列挙されています。
五穀為養 (五穀=麦・黍・ひえ・稲・豆)
五果為助 (五果=李・杏・棗・桃・栗)
五畜為益 (五畜=鶏・羊・牛・馬・豚)
五菜為充 (五菜=韮・薤・葵・葱・マメ)
気味合而服之以補精益気。(気味(=飲食物)は合して之を服用するとことで、精を補い、気を益していく。)
最後の一行にあるように、飲食物は我々の身体を構成する栄養を取り入れる基本であり、食べることで身体が活動するエネルギーや身体の材料を補給するということを示しています。これは「医食同源」という言葉にも通じていくもので、東洋医学の考え方の基本一つであります。
次にその一文の上にある4行を見てみると、そこでは飲食物を穀(穀物)、果(果物)、畜(お肉)、菜(野菜)と分類し、それぞれの飲食物が持っている作用を示しています。
今回のテーマである「お肉」が含まれる五畜の作用を見てみますと、そこには「益」という字があります。この「益」という漢字は、「皿から水があふれる」ことを表現した文字で、「ます、あふれる、みちる」という意味があります。つまり、お肉というものは、我々の身体にとりましては、身体の基本となる体力に対して、さらに体力や抵抗力、勢いをあふれるように益してくれる食べ物ということに解釈できます。
このように、東洋医学では、お肉を拒否するものではなく、「益する」ものとして扱っていおりますが、実際に臨床の現場においても、患者さんの身体に勢いが足りないときにお肉の摂取をお勧めしますと、十分なお肉の摂取をした後に次の治療に来ていただくと、身体が勢いを回復していることをつぶさに診察することができます。そしてその勢いが継続的に身体についてきますと、自己治癒力も増してくるために、さらに鍼灸治療の効果も現れやすくなってきます。つまりこれは、鍼灸の治療効果とともに、お肉というたんぱく質を摂ることが、身体の基盤作りにつながっていることを示したものだと思います。「お肉は益と為す」という『黄帝内経』の言葉は、身体の観察を積み重ねた実践・実用医学である東洋医学ならではの表現だと実感ができます。
以上のように「お肉」には「益」という力が備わっているわけですが、最後に気をつけていただきたいのは、ここに五畜(お肉)の分類だけでなく、五穀、五果、五菜が同時に列挙されていることの意味についてです。五蓄、五穀、五果、五菜が同時に書かれているということは、どれも欠けることなくバランスよく食べましょうということを著しているのだと思います。お肉が益という働きを十分に発揮してくれるためには、バランスのよい食事をしていくことが前提になります。お肉もお野菜もしっかりとバランスの良い食事を心がけて、気力、体力のある身体を創る、つまりこれが「医食同源」であることを心がけていただきたいと思います。
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鍼灸治療の効用・適応