第19回『皮膚感覚』 of 表参道・青山・源保堂鍼灸院(東京都内)Acupuncture Tokyo, Aoyama -肩こり・腰痛・頭痛・生理痛・体質改善・免疫力向上・不妊治療など


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第19回 皮膚感覚

2006年2月19日(2009年11月28日加筆)


 鍼灸治療の一つであります小児鍼は、肌に触れるようなやさしい治療ですが、治療中赤ちゃんは気持ち良さそうに自然と笑いがこぼれることが多いものです。この笑顔は、身体が緩んで楽になったという赤ちゃんからのサインであります。また、一般の大人の治療をしているときでも、敏感な方では、お腹の診断をするときに手を置いただけでぎゅるるるっとお腹が動くこともあります。これは、外からの刺激が皮膚を通して身体の中にある内臓にも伝わっている証拠でもあります。

 では、この皮膚感覚は東洋医学ではどのように考えられているのでしょうか?

 五行の分類表を見てみますと、皮膚(皮毛)を主る(つかさどる)のは「肺」になります。

五行
五臓
五主 血脈 肌肉 皮毛 骨髄

 では肺はどのようなことをしているのでしょうか?

 東洋医学では「肺は諸気を主る」と言っています。

 では肺が主宰している「諸気」とは何でしょうか?

 「気」という概念・言葉は古医書の中ではありとあらゆる場面で出てきます。気という文字が単独で出てくることもあれば、生気・宗気・真気・元気・原気・精気などのように、その気の用途によって様々な言葉が使われます。それぞれ使い分けをしっかり把握しておかないと、古医書の読み方を誤ってしまうのですが、このように各所に出てくる諸々の全ての気を主宰しているのが肺ということになります。この「気」という概念はとても把握が難しく、それだけで一冊の本が出来てしまうほどですが、わかりやすく、今回のテーマのために言い換えれば、それは「動き」「動力」「はたらき」といったものになります(「気」という概念をこのように言い換えることは大変乱暴で、誤解を招きますので、あくまでここでは簡単な概念として説明するに過ぎません。詳しくお知りになりたい方は、東大出版社から出ている『気の思想』をお読みください。)。
 この動力やはたらきというものは、人間の身体でいえば本能的な感覚による動きに相当するものです。私達が無意識のうちにしている作業や動き・本能といったものは、全て肺の力によるものと考えていただければいいと思います。現代医学の解剖学的な用語と、東洋医学の言葉を安易に重ねることは時に誤解を招くことになりますので、ここではあえてそのようなことはしませんが、例えて言うならば、我々は階段を下りるとき、一段一段をいちいち確認しなくても、自然に足を動かして一段一段進むことが出来ます。これは、肺がうまく動力を生み出すことによって自然に出来る行為であります。このように、無意識に身体を統御するはたらきが、ここで取り上げている肺のはたらきということが言えます。
 以上長々と横道にそれながら書いてみましたが、まとめてみますと、“肺は皮膚に通じ、さらに肺は身体全体のはたらきを主宰している”ということになります。これは逆からたどれば、皮膚を通した皮膚感覚というものは、人間の本能に通じているとも言えると思います。本能は、生き抜こうとする自然の動きでもありますし、人間の情動に直接関わる身体感覚です。皮膚を通じたやさしいふれあいや、愛情のこもったスキンシップは、我々の本能に安堵感を抱かせ、安らぎをもたらします。そしてその安らぎは本能や情動を健やかに育んでくれる心地よい刺激にもなります。また、昔から「あいつとは肌が合う。」と言うように、我々は皮膚感覚を通じて本能的に相手との距離感覚を定めていたりしていますので、皮膚を通して様々なものを無意識のうちに感じ取っているのだと思います。
 脳細胞が急激に発達していく幼児期において、この皮膚感覚は、生きていく本能を育てる重要な感覚になります。心理学の研究分野では、幼児期に親子の接触が少なかった子供は、幼児期だけでなく大人になってからも情動のコントロールができにくいという報告もあるそうです。 今一度我々の皮膚感覚を見直し、皮膚感覚を育てることをしてみたらどうでしょうか。鍼灸医学は腹診、脉診といった手で身体に触れる皮膚感覚を大切にした医療とも言えます。皮膚感覚を通して、一人一人の患者様と心の通う治療をしたいと思います。


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