東洋医学の鍼灸院は、表参道・青山にある源保堂鍼灸院へ(東京都内の鍼灸専門院) (C)表参道・青山・源保堂鍼灸院

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第24回 虚実と補瀉

2006年10月8日(2009年11月29日加筆)


 我々人間は定温動物ですが、この定温を維持するために、暑い夏は汗を出し、寒い冬は毛穴を閉じ、身体は季節や状況に合わせて自動的に外界の変化に対応していきます。このように、我々の身体には体温だけではなく、身体の様々な場所における機能や条件を一定に保つはたらきがあります。この身体に備わった一定に保とうとするはたらきのことを、現代医学の用語では「恒常性維持機能(ホメオスタシス)」と呼んでいます。
 この恒常性維持機能は自律神経で行なわれていますが、自律神経失調症と呼ばれる病名がつく場合は、この恒常性維持機能が狂ってしまうために、外界に対しての適切な対応が出来なくなり、身体は様々な不調を訴えることになります。明らかな病名がつかないけども不快な症状が多数ある場合などは、この恒常性維持機能に微妙な変調が起きていることが多いと思われます。

 こうした恒常性維持機能と鍼灸の作用を考えてみたいと思います。
 下の図を見てください。この図の中の「正常な範囲」というのが、恒常性維持機能能でいつも一定に保たれている“健康の幅”です。暑さや寒さ、その他の不快なストレスなどに対抗して身体は常に揺さぶられているわけですが、その揺さぶりの中でも、ある一定の幅を持った正常な範囲に納まっていればその人の身体は“健康”に保たれていることになります。
 しかし熱が出て体温が亢進したり、また夏の暑さで食欲が低下したりしますと、身体は正常な範囲を逸脱してしまいます。下の図に示した○で囲った部分が逸脱した部分ですが、この○のところが病気ということになります。これを糖尿病などに喩えると、正常な範囲から逸脱してしまった血糖値の値が出たときが糖尿病であり、正常な範囲の線上やその近くにある場合を、糖尿病予備軍といって、早めの対処が必要な要注意グループとなります。

 東洋医学では、異常な部分で亢進した状態を「実(じつ)」と呼び、異常な部分で低下した状態を「虚(きょ)」といいます。この二つをあわせて「虚実(きょじつ)」といいますが、この虚実は、身体を把握・分析する時の一つの東洋医学的な視点となり、健康の幅を飛び出してしまった状態を元に戻してあげることが、鍼灸治療の主な目的となります。
 実という状態は正常な範囲よりも亢進しているので、亢進して過剰になった部分を取り除かないといけません。この取り除く治療方針を「瀉(しゃ)」と呼びます。その逆に虚の場合は機能が低下しているのですから、不足している部分を補う必要があります。そのため、この虚に対して行なわれる治療方針を「補(ほ)」といいます。
 このように、実に対しては瀉で対応し、虚に対しては補で治療をして全身を調整していくことが、すなわち正常の範囲、つまり健康の幅を回復すると言うことになります。現代医学の用語で言えば、この「虚実」に対する「補瀉」という治療を施すことは、身体が失った恒常性維持機能を元に戻してあげるということになります。そして恒常性維持機能が回復するということは、自律神経の働きも整うということにつながっていき、さらに自律神経が整うということは、病気が治っていくということにつながっていくわけです。身体の「虚実」を把握して、銀の鍼で「補瀉」という治療を施すことが、本治法の特長であり、これは身体の「陰陽」を調整して、患者さんが持っている自己治癒力を回復し、患者さん自らの身体によって治っていくという東洋医学の原点でもあります。

 そしてもう一つ東洋医学にとって重要なのは、正常な範囲と病気の境界線のところです。この境界線のところを、東洋医学では「未病(みびょう)」といいます。未病とは、「未だ明らかな病気にはなっていないが、しかし病になる兆しがある」という意味ですが、東洋医学の原典である『黄帝内経』では、鍼灸術者はこの未病の段階で病を察知し、治していくことが良医(良い医者)であると述べています。つまり、東洋医学が予防医学といわれるのはこの病態把握の仕方にもあります。
 このような東洋医学の根本的な身体観、治療観をしっかりと認識しておくことは、患者様に接する時にとても大切になります。対処療法的に「このツボは○○病に効くから」「このツボは免疫にいいから」というだけで鍼をしていますと、虚実の把握と適切な補瀉ができませんので、治療効果が少ないと、普段の治療院での臨床で経験しております。そこで、東洋医学独特の考え方である虚実、補瀉といった考え方を元に、診断、治療をしていきますと、身体全体の状況が把握され、この考え方があるおかげで、東洋医学は、自律神経失調症や不定愁訴症候群、慢性疲労症候群といった身体の不調を調整することができるのだと思います。患者様にとりましても、今の自分の身体がどのような位置にいるのか、このような視点で見つめてみますと、自分なりの養生が見つかってくるのではないかと思います。虚実・補瀉、そして陰陽という考え方は、東洋医学の基本でもあります。

注)このコラムは一般的な方を対象にしたものです。今回は身体の陰陽、虚実、そして補瀉というものを分りやすく理解していただくために、簡単な部分を説明しました。実際の臨床では、陰陽や虚実をさらに細かく分けたり、またそれらを把握するための診断方法や東洋医学の五臓の生理学があることを最後に付け加えておきます。

資料

東洋医学で考える、体の虚実と補瀉の概念 (C)表参道・青山・源保堂鍼灸院

より深い理解のための参考図書

LinkIcon『黄帝内経・素問』
LinkIcon『黄帝内経・霊枢』
LinkIcon『陰陽五行説 その発展と展開』 根本幸夫・根井養智著 じぼう
LinkIcon『東洋医学を知っていますか』 三浦於菟著 新潮選書
LinkIcon『図説 東洋医学 基礎編』 山田光胤・代田文彦著 学研

より深く学びたい方へのサイト

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