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第32回 東洋医学はフィクションか?

2008年1月24日(2009年11月30日加筆)


 漢方医学は長い歴史と多くの経験の集積によって成り立っております。そしてなおかつ実績も上げてきました。だからこそ、歴史の遺物になることなく、実践医療として受け継がれてきました。そしてそれは現在も変わらず、こうして東洋医学は健康に良いものとして、治療効果のあるものとして活かされています。
 東洋医学と言いますと、その学術は、決められたツボを押すだけのように、簡単なもののように思われがちですが、それはあくまでほんの一部に過ぎません。しかし実際には、東洋医学を修めるために、人体のはたらきを理解し、病を治すための東洋的生理学や臓腑学、病因学、治療学を学んでいく必要があります。
 しかしある時期、この東洋医学の学問の根幹でもある臓腑論に疑問が投げかけられました。医学書に書かれている臓腑学と、実際の身体の内臓の様子はひょっとしたら異なるのではないか・・・という疑問が出てきたのです。そしてそこから、東洋医学は虚構(フィクション)ではないか?という疑問も出てきました。このような疑問を持った医家について、日本と中国の医家のお話しをしてみます。
 まず日本ですが、江戸中期の医師に、山脇東洋(やまわきとうよう 1706~1762)という人がいます。山脇東洋は漢方医で、古方派という分類に入ります。この古方派は、陰陽五行学説や『黄帝内経』などの古医書を重視するグループです。しかし山脇東洋は、古方派に属しながらも、古医書に書かれている臓腑論の記述や陰陽五行学説に固執する漢方医学に納得ができなかったようで、その疑問を解決すべく、京都で日本初の人体解剖をしました。実際に解剖をし、実際の内臓を見て山脇東洋は驚きます。それまで自分が信じていた五臓六腑の概念と、実際の内臓の様子がだいぶ異なっているのを目の当たりにしたのですから、驚くのは当然で、その驚きたるや凄まじいものがあったと想像できます。
 次に中国に目を向けますと、王清任(おうせいにん 1768~1831)という人がいます。王清任は山脇東洋と時を同じくする世代ですが、時代の空気とは面白いもので、こうして日本と中国と場所が違いながらも、王清任もまた、古医書の臓腑論に疑問を持ちます。王清任の時代は清ですが、この頃になりますと、宣教師などが中国にやってきて、中国にも解剖の知識が入ってきます。しかし、多くの医家は、儒教的な倫理観もあり、解剖をすることを好まなかったので、西洋的な解剖学の知識が、中国の医家の間で広まることはありませんでした。しかし王清任は実際の解剖を重視して、山脇東洋と同じように、古医書の臓腑論と実際の臓器の様子の差異を目の当たりにし、それを記録し、『医林改錯』という本にまとめました。
 このように、日本でも中国でも、それまで東洋医学がよりどころにしていた古医書の記述に対して、実際の解剖から疑問が投げかけられた時代がありました。この疑問の大本にあるのは、医学というサイエンス(科学)に、陰陽学説、五行学説という一つのフィロソフィー(哲学)が入り込み、フィロソフィー重視で医学がまとめられてしまうところからくる違和感だと思います。フィロソフィーはいわば物事の考え方や思考方法であり、これは時代や個人によって異なりますので、フィクションという部分がぬぐえません。ということは、東洋哲学という一つの思考方法でまとめられた東洋医学は、サイエンスではなく、壮大なフィクション、つまり虚構にすぎないのではないか?という疑問に行き着いたわけです。
 この山脇東洋の投げかけは、その直ぐ後に訪れた時代を打破しようとする大きなうねりの時期、つまり江戸末期・幕末に受け継がれ、外から入ってきた新しい思考方法である蘭学の導入によって、前野良沢・杉田玄白らによる『解体新書』の翻訳へとつながります。そしてそのうねりは、東洋から西洋へという変化、漢方から蘭方への機運へと高まり、フィロソフィー重視と見なされてしまった東洋医学は、分が悪くなっていきます。蘭方の身体観、つまり西洋医学的な身体観もまた、西洋哲学という一つのフィロソフィーを土台にしているのですから、西洋医学もフィロソフィー、フィクションと言えなくもないのですが、この大きなうねりの時代の中では、解剖という目の前にある現実の方が、抽象的な概念よりも好まれたのは事実で、これは時代の流れ、時代の空気であったのかもしれません。
 しかし、冒頭にも述べましたように、東洋医学は歴史の蓄積の中で絶えることなく受け継がれた医療で、実践的効果の積み重ねです。医療の現実は患者さんのためにあり、病を治すこと、よりよく生活する一助となることにあります。東洋医学はそのために身体がどのような構造になっているのか、どのような働きを持っているのか、そしてそれらがどのように関連しあっているかをつぶさに観察した医療体系です。東洋医学は、身体の仕組みや病気の仕組みをフィロソフィーに無理やり当てはめたのではなく、身体が持っている現実を観察していった結果、陰陽五行などの東洋哲学というフィロソフィーを借りながら構築していった医療体系です。
 私は鍼灸師として、東洋哲学と深く関わる「本治法」というものを施術しておりますが、この治療方法の効果を目の当たりにするにつけ、決して東洋医学は過去のものではなく、現在進行形で広く普及されるべきものだと確信しており、東洋医学はフィロソフィーを借りた実践的サイエンスといえると思っています。
 現在西洋医学の治療方法に疑問が投げかけられ、東洋医学が見直されています。これは、山脇東洋の時代とは逆の流れかもしれません。歴史は繰り返されるといいますが、行き過ぎた医療の矛盾に対して、東洋医学の復興が求められている時期なのかもしれません。そして、この復興の背景にあるのは、治療を求める患者様の多くの声があると思います。その多くの声に応えられるよう、日々臨床に励みたいと思います。


より深い理解のための参考図書

LinkIcon『黄帝内経・素問』
LinkIcon『黄帝内経・霊枢』
LinkIcon『東洋医学を知っていますか』 三浦於菟著 新潮選書
LinkIcon『図説 東洋医学 基礎編』 山田光胤・代田文彦著 学研

より深く学びたい方へのサイト

LinkIcon『東洋医学・鍼灸を学ぼう!』


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