第39回 気とは?(2)
2011年1月1日
前回の「第39回気とは?(1)」では、最後に東洋医学・鍼灸医学で使われる「気」の概念をまとめました。ここで再びそれを書いてみます。
「気」
- 身体を構成する基本的な物質
- 推進力
- 流れている動き
気は眼に見えないもので、実態はありません。しかしそれは空想の概念ではなく、人体という実態を観察して得た具体的なものです。例えばそれらは顕微鏡などの進歩によって存在が確認されたリンパ液であったり、赤血球であったりしますが、東洋医学・鍼灸医学を学び、それを患者さんへ医療として提供する場合、言葉を西洋医学の用語に言い換えることは、あまり意味があることではありませんので、今回は、「1. 身体を構成する基本的な物質」の中でも、その主なものを東洋医学の用語で解説したいと思います。
「身体を構成する基本的な物質」としての「気」
1.元気
我々は日常生活で、「最近元気がないなぁ」とか、「元気にあふれている」など、「元気」という言葉を多く使います。この時、我々は具体的な物質を指して元気といっているわけではなく、生きている生命力のような、活力のようなことを何となく感じながら使っているのではないでしょうか。東洋医学・鍼灸医学の「元気」も、それと完全に一致するわけではありませんが、大まかに言っていることは同じです。
しかし中身はより具体的なのです。
元気の構成要素は、腎臓に貯蔵されている先天之精と呼ばれる生命力の根本が先ず一つ。これはお父さんとお母さんからいただいた自分の生命力です。そして二つ目は、生まれた後、自分の力で摂取していく飲食物から得られる後天之気と呼ばれるもので、これは先天之気が減っていくのを補足するものです。この二つが体内で合わさって、元気となります。元気の別称として原気、真気といった言葉もあります。
例えば我々は食欲が落ちると「元気がなくなる」と言います。これは、飲食物からの後天之気が不足しているために、先天之気を助けることができないからで、東洋医学・鍼灸医学でいう「元気」と一致するものです。
2.宗気
我々の生命を維持するために欠かせないのは、飲食物だけではなく、呼吸もまた大切です。1週間くらい飲まず食わずでも生きていけることができますが、呼吸は脳のことを考えると5分も止めることができません。それほど重要なのが、呼吸です。この呼吸作用から得られる気を宗気と言います。現代医学的に言えば酸素といっても良いかもしれません。しかし、東洋医学・鍼灸医学では、肺の作用で胸中に取り込まれた酸素が、身体全体の活動に必要になった状態をも含め、また全身の活動の原動力のことも言うので、宗気が指している範囲は、酸素よりも広いかもしれません。
3.衛気
衛気の「衛」は防衛の衛ですが、ここからも分かりますように、衛気は身体の表面を守ってくれる気のことをいいます。例えば寒い日などは寒冷に襲われますが、その寒冷から身体を守ってくれるのが、衛気です。また衛気は身体の表面にあって、体温の保持にも関係してきます。衛気は、現代医学で言えば、免疫系のことを指しています。
4.営気
営気は、「栄気」と書かれることがありますが、“栄”はつまり栄養ですので、身体全身に栄養を運ぶ気ということになります。営気によって身体全体は滋養されていますので、現代医学で言えば造血系、循環器系、門脈系にあたります。
5.各五臓の気
身体の中には五臓六腑(六臓六腑)がありますが、東洋医学・鍼灸医学で特に重要視するのは五臓の方です。五臓には肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓が含まれますが、各臓器にも固有の気があります。それは、各臓器の働きを行うために必要とされる気のことで、東洋医学・鍼灸医学では、「肝臓の気」、「肝気」など、各臓器の名称を付けて呼ばれます。
以上のように、東洋医学・鍼灸医学を学ぶときに出てくる具体的な気は、主なものだけでもこれだけあります。西洋医学・現代医学の発展で明らかになったてきたものが、古い時代に、そのときはまだ目に見えなかったのですが、既にしっかりと把握されていて、そしてそれが治療行為に結びついていたこのが東洋医学・鍼灸医学です。そしてそれが現在にも残っているところに、時代を超えた価値を感じます。
「気」とは、気功師のように特殊な能力を持った人だけが分かるものではありません。誰もが把握でき、そしてしっかりと身体の中に存在して生命を維持している具体的な物質であります。上述していますように、西洋医学・現代医学でも一部は言い換えができるものです。
鍼灸医学は、具体的に存在する気を細かく把握し、応用して身体を分析し、身体の持っている自己回復力を活性化するものであります。
より深い理解のための参考図書・参考文献
『気の思想-中国における自然観と人間観の展開』 山井湧など著 東京大学出版会
『「気」で観る人体-経絡とツボのネットワーク』 池上正治著 講談社現代新書
『黄帝内経・素問』
『黄帝内経・霊枢』
『東洋医学を知っていますか』 三浦於菟著 新潮選書
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