ツボ療法を超えて(5)
2004年11月6日(2009年11月4日改訂)
「ツボ療法を超えて」と題してこれまで4回書いてきました。いくつかの実例を挙げながらツボを安易に使わない、病名→ツボは治療として直結しないことが多いことをお伝えしてきました。それでは、ツボ療法を超えたところで、どんな治療をするのか?ということをこのタイトル「ツボ療法を超えて」の最後に、まとめて書いてみたいと思います。
東洋医学の根本には、東洋哲学があります。その東洋哲学とは、陰陽理論、五行理論などをベースにした自然観察の集大成であります。そしてそれをベースにして、病気の治療へ応用していたったものが東洋医学です。人間は自然の空間で呼吸し、生活し、自然の恵みを摂取して生きている、自然の中の存在です。これを東洋哲学では「天・地・人」の相関関係と呼びますが、「天・地・人」はそれぞれが独立しているのではなく、お互いに関連し合っており、お互いが影響を与え、与えられる存在になっています。このような全体を見る視点から、身体、病、気といったものを観察していくのが東洋医学です。どうしてこのような病になったのか?というのを大きな視点で捉え、そしてその原因を全体の力で取り除くことが東洋医学の目的とするところです。
自然には木火土金水という5つの要素があり、身体の中には肝心脾肺腎という五臓(ごぞう)が五行に対応して存在しています(「ツボ療法を超えて(2)」の下図参照)。自然においても、台風などで水が強い時には土砂を押し流していくように、身体の中でも五臓のバランスが崩れた時には身体の不調、病といった姿で表現されます。流された土砂を取り除き、土手をしっかり築けばまた川の流れが戻るように、自然哲学から応用された理論、学問を基にして、五臓のバランスを修復していくことが病気を治す治療なのです。
このように、身体全体の病理、生理を十分把握した上で五臓の正気を調整することが、部分の調整につながっていきます。しっかりした木を育てるためには、まずはしっかりした根っこを育てる必要があります。大地に力強く根を張った木は、とてもしっかりした幹で、つやのある葉っぱや花、果実を見せてくれますし、ちょっとやそっとの風や雨では倒れることはありません。同様にして、我々の身体もまた、しっかりした根っこを築く必要があります。鍼灸治療の真髄である「本治法(ほんちほう)」とは、この肝心な根っこをしっかり調える治療方法です。人間の根っこは五臓六腑(ごぞうろっぷ)です。そのバランスを調整し、修復していくことが病気の治癒であり、病気に負けない身体作りということになります。
単にツボを押すだけで病気が治るほど、身体は簡単にはできていません。しかし、五臓六腑の状態を把握し、身体全体を治療対象にすることで、身体を回復する方向にツボが働いてくれます。病気を治すためには、身体全体をよく観察し、今現在その人の身体に必要なツボを選択し、五臓六腑を調整していく「本治法」が必要になります。
資料
五行の相生・相尅関係


鍼灸治療の効用・適応