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コラム 東洋医学って何?
第26回〜第30回

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第26回
五行
2006年12月21日
第27回
美肌と鍼灸
2007年3月3日
第28回
未病治療
2007年4月12日
第29回
気のお話し
2007年6月14日
第30回
ため息
2007年9月7日
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『東洋医学って何?』

第26回 五行 2006年12月21日

 このコラムや当院のブログでも何度も出てきましたが、東洋思想には陰陽五行思想という考え方があります。これは萬物を五つに分類する方法で、漢代からはじめられ、今日も多くの習慣の中にその影響が見え隠れしています。この陰陽五行思想を医学にも応用することで、東洋医学は体系的な発展を持つことができました。そしてこの陰陽五行思想による五行の分類を表にしたものを、五行色体表(ごぎょうしきたいひょう)と呼んでおり、これを利用して診察、治療が行われていきます。スペースの関係で全てを載せることはできませんが、右に示したように、五行色体表は様々なものを分類しています。
 そもそも「五」という漢字にはどのような意味があるのでしょうか?
 「五」の漢字の上下の横線「−」は、上が天の気で陽を表現し、下は地の気で陰を表しています。そしてその間の「X」のようなところは、上下の「−」をつなげるもの、すなわち、天の気と地の気の交流を示しており、「五」という漢字は陰陽の気の交わりを表しているわけです。 このように、古医書医学を作った人々が、この「五」という数になみなみならぬ思い入れを持っていたことが、この漢字の成り立ちからも分かります。
 この五行色体表は、一見すると整然と分類されているので、単なる文字の羅列のような感じもしますし、これが本当に利用可能なものかどうかはなかなか理解できないと思います。しかし、実際の臨床ではこの五行色体表がないと手も足も出ません。鍼灸師は、この五行色体表から様々な情報を得て、人体の診方に様々に応用することで診断と治療をしていきます。鍼灸治療・東洋医学で使う陰陽五行の模式図−(C)東京・表参道・青山・源保堂鍼灸院
 この五行というものは、一行一行が独立しているものではなく、左図のように、五行の循環とお互いの拮抗という関係性を持っています。五行色体表と、この循環と拮抗関係の図を常に頭の中で追っかけながら鍼灸治療は進められていきます。
 東洋医学の進歩は、得にこの陰陽五行説が医学に応用されてから目覚しく進展していきますが、これは根本には自然の動きと人間の身体とは影響しあっているという東洋的な身体観を、五行により表現することが可能になったからだと思われます。そしてこの身体観は、“身体の中の五臓のバランス”をいかに保つかということが重要視されるようになりました。五臓のバランスが整うことで、無病の状態になり、病への予防になる、というのが東洋医学の考え方の基本となります。
 とかく我々は自分の好きなものしか食べなかったり、感情的にも過度な怒りをもってみたり、なかなか中庸でいることは難しいものです。できないからこそよりこのバランス感覚が求められるのかもしれません。私自身もこの色体表を見る度に、反省をしています・・・。

(関連情報)
表参道・青山・源保堂鍼灸院のコラム『東洋医学って何?』
「ツボ療法を超えて5」


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五行色体表
五行
五運 長夏
発展
気候 湿
五臓
五精 意智 精志
五官
五志 憂思 恐驚
五主 血脉 肌肉 皮毛 骨髄
五華 気息
五味
五畜
このほかにも様々なものを五つに分類しています。


第27回 美肌と鍼灸 2007年3月3日
 
 先日患者様からこんな話しを伺いました。
 それは、こんな感じです。
 「この間いつも買いに行っている化粧品屋さんに行ったんですよ。そしたらいつも見てもらっている店員さんに、“何か良いことあったの?”って聞かれたんですよ。“え?なんでですか?”って聞き直したら、お肌が前よりも明るい色になって、コンディションも良いですよ。”って言われたんですよ〜。これって鍼の効果なんですね〜!」というお話しでした。
 このお話を聞きまして、私も嬉しく感じました。女性にとって、お肌のコンディションはとても気になるものだと思います。そのお肌が、化粧品のショップの方が見ても良くなっているということを聴き、鍼灸治療の良さが、また“プロの女性の目”からも裏づけされたかな、と感じたからです。そして、お肌の調子が良いことは、女性にとっては大きな自信にもつながると思いますので、患者様にとってもとても良かったと思い、その成果が出たことを喜びました。

 鍼灸治療をするときに、まず“そのとき”の患者様の身体の状態を診ます。そして、その状態に合わせて鍼灸治療を施していくわけですが、そのときにどれだけ鍼が効いているのか、今、身体はどのような状態にあるかという判断をしなくてはいけません。また、一回の治療で完治するわけではありませんので、何度か治療を受けていただき、効果がどう顕れているか、その経過を観察します。このときの効果測定の判断基準の一つに、「皮膚の状態」が挙げられます。

 健康な皮膚の状態は、「温暖(温かみ)と潤沢(うるおい・艶)」を持っています。一方不健康な状態や、栄養が十分に取れていませんと、皮膚の状態はかさかさしていたり、ぼこぼこしていたりして、また、皮膚にしわが寄ったりします。これは美肌とはいえません。 伝統的な東洋医学では、身体の中(臓器の状態)の状態を、外側(皮膚、髪、爪など外から見えるもの全て)から診ていこうと言う技術が発達していますので、こういった患者様の皮膚のコンディションの変化を、患者様本人以上に、治療者は敏感に察します。

 東洋医学では、この皮膚は外の環境の変化や、風邪などのウィルスや最近から身体を守る防衛機能として捉えています。その防衛機能を担っているものが、身体を巡る「気血営衛(きけつえいえ)」と呼ばれるものです。つまり、この気血営衛の状態が整っていますと、皮膚は防衛機能を発揮しますので、風邪にもかかりにくく、環境の変化にも対応することが容易になります。そしてこのような防衛機能がしっかりしているときの皮膚というのは、きめ細かく、艶がある状態、いわゆるこのような皮膚を、「美肌」と言います。
 鍼灸治療は、五臓六腑を調整するのですが、この調整が進みますと、身体は気血営衛をしっかりと作ってくれるように代わります。気血営衛は美肌の基礎ですから、気血営衛の生産がうまくできるようになるということは、当然肌もきれになり、艶が出てくるわけです。
 このように、気血営衛の供給がうまく成されるようにすることが、とにもかくにも健康の基本になります。“内側からきれいになる”ということは、このような東洋医学的な意味がある、というわけです。鍼灸によって“身体の中から美肌”を目指してみませんか?

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第28回 未病治療 2007年4月12日

 東洋医学には、「未病(みびょう)」という言葉があります。これは、健康と病気の間にある状態で、何かしら不快症状があるが、まだ病気というほどでもない、かといって健康というほどすっきりしない・・・という状態のことを指します。(右上図を参照)。この未病のとき、我々の体と心は、完全な健康とは言えませんので、当然ながら不快な症状が出てきます。しかし、このような未病の状態で病院などで検査しても、数値的な異常が出ないことが多く、病名も付かないことから、薬や処置もないことが多くあります。病院へ行っても、原因も分からず処置もない・・・しかし依然として不快症状が残り、その症状に悩まされ続ける・・・。こういう状況が続きますと、より不安と不快感が募ってしまい、日々の生活全体が暗いものになってしまいます。そしてこの図を見てもお分かりいただけるように、健康と病気の間にある「未病」の範囲は広いものです。ですので、病気だと思って病院に行ってみたところ、意外と処置がなかったり、検査結果に異常が出なかった場合の多くは、この未病にあたることが多くなります。

 我々は、健康なとき、病気にならないように「予防」ということをします。例えば冬の季節ですと、風邪をひかないように手洗いやうがいをしますが、これは風邪にかからないためのもので、健康な状態にしておく「予防」になります。そしてもし予防をしていても、風邪になってしまったら、次に風邪薬を飲んで「治療」をします。
 しかし、不快症状があるが健康とも病気とも言えないようなとき、風邪でいえば咽が少し痛い、頭が少し痛いというとき、まだ風邪の「治療」では行き過ぎで、またすでに症状が出ているので、単なる「予防」だけでは足りません。このようなときこそ、東洋医学の「未病」という概念を使うことで、この健康とも病気ともいえない「未病」の状態にアプローチすることができ、より積極的な「未病治療」を行うことができます。
 今、風邪を例に上げましたが、風邪だけでなく、多くの病気の場合、健康から徐々に病気に向かっていくので、「未病」の状態が存在します。また、ちょっとした季節の変化などで身体がバランスを崩したとき、我々の心身は揺さぶられますので、健康状態を超えて、「未病」のゾーンに入ってしまうことが少なくありません。このように、「未病」は病へ向かうあまり良くない状態でありますので、「未病」のゾーンに心身が入ったときには、その「未病」の状態に合わせた、「予防」よりもより積極的な「未病治療」が必要となります。
 また、病を未病の段階で治しておくことは、まだ体力もあり、自己回復力がある時期なので、心身の回復もまだありますので、治りも早いといえます。

 右の真ん中に掲げた写真は、今から500年前に書かれた『類経』という古医書の一ページで、ここでは『黄帝内経・素問』のある未病を解説しています。ちょうどこの写真の真ん中にあるタイトルに、しっかりと「治未病」と書いてあることが分かると思います。
 このようにすでに東洋医学では、はるか昔からこの「未病」という状態を捉えており、そして、この未病のうちに治療をしておきましょう、ということを記しています。
 実際に、鍼灸治療を受け続けている当院の患者様方からは、「今年の冬は風邪をひきませんでした。」「今年は花粉症が楽です。」というように、予防+未病治療が功を奏し、体質改善ができたお声をいただきまきます。
 鍼灸治療の良い面は、このように「未病」の段階から心身にアプローチをして、健康な状態に身体を戻すことができること、そして、治療を受け続けることで体質改善をし、病にかかりにくい身体を作る「予防」ができる、というように、「予防+未病治療」の両面をできるところにあります。普段から健康の幅を保ち、抵抗力をつけることができることにあります。

 どうか鍼灸治療を身近なものとして、日々の生活に取り入れ、
「早く治せば、早く治る、未病の知恵」を合言葉に、健康な心身と充実した毎日を取り戻してみてはいかがでしょうか。

 最後に未病チェックシートを作りましたので、こちらを見て自分の心身の声を聞いてみてください。 → 未病チェック

【関連情報】
□ コラム・東洋医学って何? 『健康の幅』
□ 表参道・青山・源保堂鍼灸院ブログ『鍼たま』より
  『未病 (1)』 『(2)』 『(3)』 『(4)』 『(5)』 『(6)』 『(7)


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鍼灸治療・東洋医学で考える「健康�・未病・病気」の模式図−(C)東京・表参道・青山・源保堂鍼灸院


鍼灸治療・東洋医学の古医書の一つである『類経』より、未病を解説した箇所。−(C)東京・表参道・青山・源保堂鍼灸院


健康の幅模式図−(C)東京・表参道・青山・源保堂鍼灸院

第29回 気のお話し 2007年6月13日
 
 東洋医学は、よく“気の医学”と呼ばれることがあります。これは、西洋医学と比較してみますと、“気”という概念が東洋医学独特なものであるためです。西洋の方から見るとこの“気”というものは分かりにくい概念のようですが、普段の生活の中で“気が利く”“気まずい”などの表現を使う我々日本人にとっては、“気”というものを実感として感じており、馴染みがあるのではないでしょうか。しかし、その一方で、では“気”というものを突き詰めて考えてみますと、目に見えるものではありませんし、科学的にもまだとらえどころがありませんので、一体“気とは何だろう?”という疑問も残ります。

 我々東洋医学を学び、実践しているものにとって、“気”というものは、概念だけではなく、実際の治療の中でしっかりと意識され、治療対象として扱うことができる“実態のある”ものです。目に見えたり、触ったりはできないのですが、“気”というものがあるということが前提で成り立っているのが東洋医学ですから、単なる仮定の話ではありません。
 “気”というものがどれだけ大切かと言いますと、『黄帝内経』には、「人は気を以って本となす」と端的に記されていることかわらも分かると思います。この文章を意釈しますと、「人体にとって、気とは根本である」となりますが、気というものが生命活動の根源であるということを説いています。また、『黄帝内経』を読んでいますと、他には「気が満ちていれば生命力も盛んである。」「気が傷れると病になる」ということも書いてあり、気が健康的な生活にとって以下に重要であり、そして気の状態が病気、未病、健康の状態にも関わってくると述べています。
 さらに『黄帝内経』を読んでいますと、“気”にも様々な種類があることが分かります。例えば生命の根本的な気のことを“真気”や“元気”と言ったり、また、身体の外側を護る気のことを“衛気”と言ったり、五臓六腑にそれぞれある気を、五臓の名称をつけて“肝気”“脾気”と言ったりします。普段我々は気という言葉を簡単に使い、どれも同じようのように思っておりますが、実はこのように“気”というものは、細かく分けることができ各々の特徴を把握して、捉えることができるものとして東洋医学では考えてきたわけです。そして実際の臨床で、この“気”という考え方を人体に応用し、治療に使うことで、身体の調子を整えることができるわけです。
 この気というものは、昔は「氣」と書きました。「气」は雲の流れを表現したもので、雲は風に流されますから、風=空気=気につながります。そして、その中は、「米」です。この「米」は、飲食物を表わします。つまり、“気”の大本は飲食物であることが分かります。飲食物を本にして作られる「気」ですから、普段の食事を気をつけることが、“気を盛んにしておく=病気にならない”ことにつながっていきます。

 気というものは一言では語りつくせないもので、たくさんの名称があります。存在する場所や働きによって“気”は変わっていきます。今回のコラムでは全てをお話できませんが、何となく捉えどころのない“気”というものが、東洋医学では捉えることができ、治療に応用できる実態のあるものだということを、今回のこのコラムを通して知っていただきたく思います。


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第30 ため息 2007年9月7日

 当院に通われている患者様より、「ため息って東洋医学的に説明できるんですか?」とご質問を受けました。ため息は深いストレスによる身体表現ですので、多くの方も困っておられると思います。そこで、これはコラムにして皆様にも知っていただこうと思い、筆を取りました。

 東洋医学の原典中の原典である『黄帝内経素問・霊枢』。この『霊枢』の「第二十八口問(くもん)篇」という中に、ため息は「太息(たいそく)」として記述があります。この「口問篇」は、ため息の他にくしゃみやあくび、げっぷなど、誰にでも起きる生理現象を解説した篇です。
 そこにある太息についての記述にはこんなことが書いてあります。

「憂いや思い煩いは、心臓を中心とした系統を急迫させ、気道を束縛し、通りを悪くします。そこで、この束縛された気道を広げるために、太息が生じます。」

(『霊枢・第二十八口問篇より/源保堂鍼灸院・院長・瀬戸意釈)

 このように東洋医学で見ますと、ため息の機能的原因は、気道が狭まることにあります。これは、ため息が出るときとの状況を思い出すとわかることだと思いますが、心配事や悲しい出来事、考え事などがあると、胸が締め付けられるようになり、呼吸が浅くなっています。そしてそんなとき、無意識に何とも言えない太い息(太息)をもらし、それがため息になります。
 このように身体の機能的な面で見ましたら、気道を広げることでため息を減らすことができますが、根本的には憂いや思いわずらいの原因となっている現実的な問題や諸事情が改善していかなくてはいけません。
 しかしその問題が解決できれば、そもそもため息はありません。今はまだ解決できない諸事情がありながらも、不快なため息は極力減らしたいものです。周りに対しても、自分にとっても、ため息というものは、ストレスによる身体症状ですから、身体の面だけでも解決したいものです。
 そこで、もっと積極的に身体の側からも、解決の糸口を見つけたいものですが、「口問篇」の続きには、「手少陰心主、足少陽を補う」と治療方針が書いてあります。この治療方針を意釈しますと、“精神の中心である「心臓」とそれを補佐する「胆のう」を助けましょう”ということになります。
 そこで、まず心臓を助けるためにしてあげたいのは、会話をすることです。言葉をしっかりと発語して話すことです。下の色体表にも示したように、心臓は「言」に配当されます。これは言葉、発語を意味します。発語をすることで、心系統が動きますので、会話をすることを心掛けてください。そして心臓は、心臓以外の他の肝・脾・肺・腎によって支えられている存在ですので、後天の気である食べ物にも気をつけ、また、心臓が統率する血を休めるためにも、血を蔵する肝臓を休めるためにも十分に睡眠を取る必要もあります。
 また、もう一つ補うべき胆のうですが、これは血を清浄する働きの臓器です。そこで、この働きを助けるために、血液をきれいにしてくれるたまねぎ、れんこんといった野菜を多く食べることも大切になります。そして、この胆のうの特徴は「直にして疑わず。故に決断が出る。」(『讀素問鈔』より)ですので、直面している問題には素直になれなくても、普段の生活の中での何気ない思いを、素直な心持ちにするよう心掛けることが大切になると思います。

 ため息が多いとき、ため息が出そうなとき、私は、「剛正果決」「中正」「直にして疑わず。故に決断が出る。」という胆のうを表現するにふさわしい岡本太郎先生の言葉を思い出します。最後にその言葉を引用させていただき、ため息の回を終わらせていただきます。

「 賭けとおし、貫いて運命を生きる、そのためにつまらぬ目にあい、不条理に痛めつけられても、それはむしろ嬉しい条件として笑って貫きとおす人間でありたい。ふりかかってくる災いは、あたかも恋人を抱き入れるように受ける。人間のノーブレスだ。
 逃げない、はればれと立ち向かう、それが私のモットーである。」(『歓喜』岡本太郎著 P7より引用)

      


五臓色体表
五行
五臓
五声


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