『はり100本』
著者 竹内文近
発行 新潮新書
価格 714円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
“ある鍼灸師のお仕事のお話し”という本で、専門家が参考にできるものではありません。鍼灸に興味ある一般向けの本です。
鍼治療というものがどのようなものか、それは一般の方にとってはイメージしにくいものです。鍼は痛いのではないか?鍼は怖いのではないか?という鍼という言葉の響きから感じるイメージがあるのかもしれませんし、そしてその一方では、鍼はとても効くのではないか?神秘的なものではないか?というイメージもあるように思います。私自身臨床をしていますと、「鍼っていうとお年寄りの先生がやってるイメージだったけど、意外と若い先生がやってるのね」と言われることもあり、まだまだ偏見の強い、“鍼は特殊なものである”というイメージが先行してしまいがちな世界なのかなと思ったりもします。
本書『はり100本』というタイトルも、インパクトがあり、また新たな偏見のあるイメージを付けてしまうのではないかと正直思います。また、内容についても、有名人の治療の話などもあり、“特別”なものであるという印象を強く感じさせてしまうところがあります。さらに、この方の治療は、自分が編み出した的な方法論ですので、一般的なものではないので、治療を受けたいと思っている側にとっても、これから治療を学ぼうとしている方にとっても、具体的なものが残りません。そういった意味では、『はり100本』は、“こういった治療もあるんだなぁ”という感じで、軽く読んだ方が良いのではないかと思います。
現在鍼灸を学んでいる方、臨床経験の浅い方にとっては、本書に書かれている著者の職人気質のところや、臨床に対する態度は、学ぶ姿勢として参考にできますが、まず学ぶには、オーソドックスな基礎を作ることが大切ですので、治療内容については、同じような治療をしなくてはいけないと、あまり真剣に捉えすぎないほうが良いと思います。
治療を受ける側としては、『はり100本』に書かれている治療方法が絶対的なものであるとか、魔法のような治療をしているというよなイメージをもたれないほうが良いと思います。鍼灸院の看板は目にするけど、これまで一度も受けたことがない、どんなことをしているんだろうと思っている方には、こんな仕事もあるんだなぁと、その仕事振りを垣間見るという感じで軽く読むものとしてはお勧めです。
『鍼灸の世界』
著者 呉澤森
発行 集英社新書
価格 714円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
『はり100本』同様に、ある鍼灸師のお話でありますが、一般的な内容で、参考になる点もありますので、星はひとつ多くしておきました。癖のない一冊としてお薦めです。
著者は、上海中医薬大学出身で、WHO中国国際鍼灸センターの指導教官だった中医師。後に北里大学東洋医学総合研究所の招待で来日し、日本のはりきゅう師の資格を取得し、日本国籍を取得した先生です。
内容は著者の歩んできた道のりと、タイトルどおり鍼灸の世界が書かれています。著者自身が上海の中医学出身であることから、中国で学んだことや、当時の中国の情勢が語られ、そして鍼灸についての内容は、鍼灸の中でも、中医学的な鍼灸のお話が多くあります。多少偏りがあるようにも感じますが、一つの方法論を追究する傾向にある鍼灸師にとって、それはいたし方のないことでありますし、それを除いて全体的にみてみた場合、本書の内容はバランスよく、オーソドックスな内容です。『はり100本』が自分の技を誇示するような内容であり、一般的ではないのと比較しますと、こちらはそれほど強い癖や個性はありません。個性的ではないため、正直読み物としての面白みは少ないかもしれません。しかし、個人的な意見としては、個性的なものを最初に学ぶよりは、標準的なものから学んだ方のが良いと思いますし、鍼灸の世界(他の世界もそうかとは思いますが)は、標準的な基礎を作ることなくして個性は発揮できないように思いますので、その点でいきますと、この『鍼灸の世界』は、読みやすく、鍼灸の世界をぐるっと覗いてみるには良いように思います。これから鍼灸を勉強しようと思っている方、鍼灸ってどんなものだろうと興味のある方にとっては、標準的な内容でお勧めです。

※ 現在、講談社現代新書は装丁が一新していますので、この写真とは異なる表紙になっていますので、本屋さんで探すときはご注意ください。
『「気」で観る人体-経絡とツボのネットワーク』
著者 池上正治
発行 講談社現代新書
価格 756円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸・漢方について興味のある一般の方や、専門の方も読める内容で、特に経絡・ツボについて知りたい方にお薦めです。
この本では、まず東洋医学独特の概念である「気」というものを、中国文化の中での成り立ち方やその概念を説明し、それが医学にも応用されてきた歴史を考察しています。中国哲学・中国思想は、「気」というものをキーワードにして成立した学問体系ですが、現在は人文科学の分野で扱われています。しかしそれが自然界にも通じ、医学にも応用できるということになると、これは自然科学の分野にも入ってきます。つまり、「気」という学問は、文系、理系というものに分断するものではなく、両者が混在した世界観といえるのではないでしょうか。そういったことを含めた中国医学の「気」という視点で、その気が流れる経絡、気が集まるツボというものを述べたのがこの本です。
この本は、経絡の流注の順番で書いてあるので、とてもまとまった印象を受けます。鍼灸学校に入りますと、経絡経穴概論という授業がありますが、これはひたすら経絡と、その経絡上にあるツボの名前と場所を覚えることに費やされる授業です。ともすると退屈な暗記科目になりがちですが、この書物をそばに置いておきますと、経絡を学ぶことに興味を持つことができるようになると思います。流注順ですので、順番に追っていけるのが本書のよいところです。また新書なので、鍼灸学校の行き帰りの電車の中でも少しずつ開いては読むことができるのではないでしょうか。
『経絡テスト』
著者 向野義人
発行 医歯薬出版社
価格 3150(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
古典鍼灸で言うところの経筋の治療といって良いかもしれません。身体の動きに沿った検査を元に、異常のある流注への施術という極めてシンプルな治療方法ではありますが、とても効果があり、初心者でも入りやすい内容です。
「経絡テスト」とは、福岡大学の向野義人先生が体系化したものです。おそらく経絡というよりは、経筋を扱った治療方法であると思われますが、それは、本書の中において、「操体法」が少し引用されていることからも分かります。いずれにせよ、「経絡テスト」という一つの明確な指針を示しているので、内容としても、臨床としても、とても分かりやすく、実践的なものになっています。
身体に張り巡らされた経絡と同じ走向部位で、現代医学で言う筋肉の連携部位のつながりを経筋といいます。経筋の症状は、スポーツ障害をはじめとする、運動器の疾患全般に出てくるものなので、こういった疾患に対してはより効果を発揮すると思います。しかし本書の中では、運動器疾患の他に鼻づまりや、生理不順、冷え症なども扱っているので、経絡テストおよびその治療によって改善される症状も多いのではないかと思います。そういった意味においても、とても実践的です。
古典的な治療をしている立場から考えますと、本書の提唱する経絡テストは、経絡の走向を意識することにつながりますので、どこの経絡の調子が狂っていて、どこの臓腑の正気が虚しているかを診察に使用することができますし、実際に治療にも応用することも可能ではないかと思います。本書の作成には、中医学の先生も入っているので、古典的な治療の概念と、経絡テストでの考え方の整合性も試みており、その応用の範囲にも広がりがあり、とても興味深いものがあります。古典で頭がいっぱいになったとき、少しこのようなものを読んでおくと、また新鮮な知識を得ることができると思います。
『経絡テストによる診断と鍼治療』
著者 向野義人
発行 医歯薬出版社
価格 3150(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
上述した『経絡テスト』 向野義人著 医歯薬出版社をより深めた内容です。『経絡テスト』 向野義人著 医歯薬出版社と併せることで、より深く経絡テストが理解できるようになります。
上述した『経絡テスト』 向野義人著 医歯薬出版社をより深めた内容で、より実践的な内容になっております。『経絡テスト』 向野義人著 医歯薬出版社と併せて読むことで、経絡テストをより深く知ることができ、経絡、経筋、流注といったものに対してもより実践的で、目的を持った診断をすることが可能になると思います。経絡テストと五行との関連など、新しい試みも興味深く読むことができます。
是非両者を併読することをお奨めいたします。






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