『糖尿病は薬なしで治せる』
著者 渡邊昌
発行 角川oneテーマ21
価格 667円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
糖尿病とはどういう病気なのか、そして、糖尿病の患者さんはどんな生活をしたらいいのか、東洋医学・鍼灸治療の患者様にも多くみられる糖尿病の患者さんへのアプローチやアドバイスを学べる一冊です。
2008年12月に、厚生労働省より「平成19年度国民健康・栄養調査結果」が発表されましたが、平成19年の重点調査項目の一つが「糖尿病」でした。その発表によりますと、糖尿病が強く疑われる人は約890万人。糖尿病の可能性が否定できない人は約1,320万人。合わせて約2,210万人ということです。この数字によりますと、国民の5人に1人は糖尿病の可能性があるというのですから、とても驚きの数字ではないでしょうか。糖尿病はその後に起きる可能性のある二次障害、合併症がありますので、この数字を見て対岸の火事と済ませるわけにはいかなくなります。
この本の著者である渡邊昌氏は、国立がんセンターの疫学部長を勤めたこともある医師です。その医師が、自らの糖尿病体験とその克服体験から、糖尿病を考察し、そして日ごろの生活の仕方などを提唱しています。
内容としましては、とてもコンパクトにまとまっており、糖尿病と人類の歴史から、糖尿病の仕組みや成り立ち、糖尿病の種類などを分かりやすく掲載しています。ただし気をつけていただきたいのは、タイトルを読みますと、どんな糖尿病でも薬なしで治ってしまうかのような印象を受けてしまいますが、そうではなく、糖尿病の中でも、まだ予防的な生活をすることで避けることが出来る“境界型糖尿病(著者が提唱する造語のようです)”や、まだ薬の投与をしていない段階について、主に言及していると考えたほうが良いと思います。しかしながら、冒頭に上げた数から考えて見ますと、この本が有効な方のほうが多いと思いますので、とても役に立つ本であることはいうまでもありません。
鍼灸の臨床をしていましても、糖尿病を主訴にする方や、糖尿病を持病としてお持ちの方も多くあります。東洋医学でも、糖尿病は「消渇病(しょうかちびょう)」と昔から記載されておりますので、昔から多くの方が悩まされてきた病気であり、今日でもなお、東洋医学・鍼灸を学ぶ者にとっては、どうしてもお役に立ちたい分野ではないでしょうか。
東洋医学・鍼灸にとっての糖尿病を考察するためにも、まずは糖尿病がどういうものかを知っておくことは有効です。また、薬に頼りすぎない糖尿病対策として、運動や食事など普段の生活に気を配っておく必要があります。こういったことを患者様にアドバイスするために、この本は役に立ちます。著者は医師でもありますので、自分の体験を基にしながら医学的な考察を深めておりますので、信頼できる一冊になります。

『世界は分けてもわからない』
著者 福岡伸一
発行 講談社現代新書
価格 780円(税別)
お薦め度 ☆☆☆
東洋医学・鍼灸治療の臨床に直接結びつく本ではありませんが、伝統的な医療とは全く違う分子生物学から見た生命観を知ることができるエッセイ風の一冊です。
現在の医学は、いわゆる西洋医学・現代医学と呼ばれています。その対極として、東洋医学・伝統医療といったものも同時に存在します。しかし、多くの方にとって医療と言えば前者であり、西洋医学・現代医学を最初に選択すると思います。私は鍼灸という東洋医学の分野の一つを仕事にしておりますので、患者さんの身体を診ていくときには、東洋医学・鍼灸医学の身体の診方を優先していくことはもちろんのことであります。また医療を選択する場合も、まずは鍼で治すことを優先していきます。
このように西洋医学と東洋医学という二つの医学が存在します。あるときは西洋医学が持ち上げられ、あるときは西洋医学にも限界があるといわれて、東洋医学が見直されているところもあります。しかしこれは奇妙な感じもします。同じ人体という一つの共通したものを見ているにもかかわらず、医療として二つの異なる視点があり、二つの医学で異なる見解を示すことがあったり、アプローチもかなり異なったりします。
これは一般的には文化的な成り立ちが違うということから説明されたりしますが、それも一理はあると思います。しかしそれだけなのでしょうか?同じ身体を見つめ、同じように病気を治そうとしているにもかかわらず、どうしてアプローチがこれだけことなるのでしょうか?
そもそも人体には矛盾が存在しています。また人体は、マクロとミクロの視点でズームをしていくと、全く異なる世界を見せてくれたりもします。西洋医学、東洋医学という文化的なファインダーの違いだけではなく、そもそも身体そのものにマクロとミクロの異なりが存在します。それをどの段階で分けていくのか、どの段階で医療として利用するのか、そのような分け方が両者の医療の違いになっているようにも思います。
本書は分子生物学を専攻する福岡伸一博士によるもの。ランゲルハンス島の話しや、癌の話し、ソルビン酸の話など、医学的にも参考になるお話が前半にあります。後半では、分子生物学界で起きたスキャンダルについて書いてあります。後半はノンフィクションミステリーといった感じで、読物的です。
読み進めていきますと、西洋医学と東洋医学という分け方は、“分けてもわからない”というところで奇妙な一致を見せてくれるように思います。
『数字でみるニッポンの医療』
著者 読売新聞医療情報部
発行 講談社現代新書
価格 720円(税別)
お薦め度 ☆☆☆
現在の日本が抱えている医療面での問題を知ることができます。東洋医学・新きゅう師として何ができるのか、どんな貢献ができるのかを考える一助になります。
現在の日本は、あらゆる面で改革を必要としているように思います。それは、戦後の復興から高度経済成長に至るまでの制度や産業、経済のあり方が、今の日本にはそぐわなくなっているという、構造的な問題が根底にあるように思います。医療においても、「医療崩壊」という言葉が象徴するように、高齢化社会、医薬品の問題、小児科の不足など、これまでは考えられなかった様々な問題が浮かび上がり、その現実の前で多くの患者さんが不満や不安を抱えています。普段健康なときは医療というものを意識しませんので、「医療崩壊」と言われてもピンとこないことも多いのですが、実際に自分が病気になって医療機関にお世話になると、途端に医療費の問題や、病因の対応などを目の当たりにすることになり、日本の医療の現実を知ることになります。まさに、“病気になってはじめて健康のありがたさが分かる”というのも、このあたりから痛感する方も少なくないのではないでしょうか。
本書は、読売新聞の医療情報部というところが、読売新聞紙上で2004年から2007年の間に連載された「医療の値段」というコラムが元になって生まれた本ということです。新聞紙上で掲載されていたときは、多くの読者から疑問や質問が送られていたようで、その質問や疑問もコラム連載の原動力となったようです。
内容に関してですが、題名どおり、統計的な“数字”を基準にして、あらゆる角度から日本の医療の現実へ問いかけています。本書の章を見てみますと、「日本の医療は高いのか」「身近な医療費」「高齢者と終末医療」「がん・生活習慣病」「心の病気」「出産・子育て」「医師の姿」「検査大国」「薬を巡るあれこれ」というものが挙げられています。各章はさらに細かいトピックに分かれており、それぞれ1~4ページくらいにまとめられて、とても読みやすい形になっています。各トピックの数字の見方に対しては、分析が粗いような面もありますが、各論を掘り下げるのではなく、読者が持っている素朴な疑問を基にして、現在の日本の医療にはこれだけの問題点があるという、問題の提示というのが本書の目的ではないかと思いますので、これはこれで評価できる内容だと思います。これだけたくさんの問題を抱えていることに先行きを危ぶむ感じもありますが、本書が数多くの患者さんの疑問が後押しをして出来上がったように、病気になって気がついたときにでも、一つ一つわれわれが声を上げていくしかないと思います。
本書は、現在の医療の主流である現代医療、西洋医学について書かれた本ですが、そのカウンターとしての東洋医学、鍼灸医療は、日本の医療の中で今後どのような役目を担っていけばいいのだろうと、患者さんが求めるニーズと東洋医学・鍼灸医療の合致点を考えるためにも好著だと思います。
『本当は必ず治るアレルギー・アトピー』
著者 皆川正夫著
発行 マイコミ新書
価格 819円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
アレルギー・アトピーに悩まされている方をはじめ、多くの鍼灸治療者にも読んでいただきたい臨床に活かせる実践的な本。
本書はアレルギー全般とアトピーを取り上げていますが、特にアトピーについて、何章にも分けて詳しくアトピーの成り立ちや治療方針を述べています。そして本書の“本当は必ず治る”というタイトルは、希望が沸く一言だと思います。本書は、とても冷静で公平な視点で、実績のある治療方法の長年の取材を通して書かれていますので、いわゆる“アトピービジネス”と呼ばれる奇をてらった流れのものではありません。本書を読んでおりますと、「アトピーは治る病気なんだよ」というメッセージを、一人でも多くの患者さんに伝えたいという著者のあたたかさを感じますが、そのあたたかさは、よくあるキャッチーなコピーや胡散臭い症例から感じるものではなく、著者の長年の取材による確信と根拠に裏づけされているもので、それが本書の信頼性になっています。
東洋医学・鍼灸治療を生業にしている者の中にも、とかくステロイド剤を悪者扱いする方がいます。それは、「ステロイド剤は症状を抑えているだけ」「ステロイド剤はリバウンドが怖い」という先入観によったもので、決してステロイド本来の使用を見ていっているものは少ないと思います。まずそういう意味では、東洋医学・鍼灸治療をするものにとって、本書は先入観による間違ったステロイド観を反省する一冊でもあります。
アトピーについて本書が一貫して説いているのは、今盛んに燃えているアトピーの火を消すためのステロイド剤の適切な使用と、それと併行して、皮膚組織を修復するための保湿をしっかりしていくという、ごくシンプルな治療方針です。その方法論はとてもシンプルで、何か特別なものを食べるわけでもなく、何か特別な薬が必要というわけではありません。このシンプルさは、アトピーで起きている皮膚の症状を、病理的捉えたところから見出されたもので、決して荒唐無稽なものではありません。また、誰もが実践可能なところが本書のよいところです。
東洋医学や鍼灸治療で体質改善を行って、アトピーが治った症例ももちろんあります。しかし、体質改善だけを治療方針にしておくと、治癒までに時間がかかりすぎることもあります。そこで本書を読むことで、東洋医学・鍼灸治療でできる可能性をさらに加えてみると、よりよいアトピー対策ができるのではないかと思います。臨床の助け、アトピーを理解する一冊としてぜひ読んでおきたいものです。
『人体常在菌のはなし-美人は菌でつくられる』
著者 青木皐
発行 集英社新書
価格 714円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
人体と一緒に生活をする常在菌。常在菌の性質を知り、「育菌」を生活に取り入れていくことで、さらなる未病の効果も果たせるように思います。
人間の身体は、一人で生きているように見えて、一人ではない。実は人間以外の無数の菌とともに生きています。人体の細胞は60兆個と言われていますが、人体と共に生きる菌の数は100兆個で、重さにしたら1~1.5キログラムもあるといいます。常に一緒に我々と行動を共にするこの無数の菌を、常在菌と言います。
この常在菌が心地よく生きてける環境が健康であり、また、その健康の手助けをしてくれるのが常在菌でもあり、常在菌と人体の関係は共存共栄が基本になります。そしてその共存共栄が常にコラボレートしていくと、健康美ということにつながっていきます。しかしそれとは逆に、ストレスがたまったり、体調を崩したり、暴飲暴食を繰り返していると、常在菌との仲の良い関係はバランスを崩し、常在菌の中でも、普段は味方であったはずの菌が、人体に悪影響を与える悪者になってしまうものがあったりします。しかしこれもまた、常在菌が身体のバランスの崩れを指摘しているという意味では、人体にとってはありがたい存在なのかもしれません。常在菌との共存共栄は、今のビジネス用語でいえれば、WIN-WINな関係ということなのでしょうか。
本書は、常在菌にまつわるお話が豊富で、話も楽しく、わかりやすいです。章も順序だてがしっかりしていますので、菌についての知識を身につけながら、それを普段の生活に生かす方法を学ぶことができます。
本書・著者は、「育菌」という言葉を造語しています。人体にとって有益な常在菌を増やしていく生活やその知恵を、“菌を育てる”という意味で、「育菌」と表現しています。健康を育てる方法の一つとして、育菌は東洋医学・鍼灸医学にも通じるところがあると思います。患者さんへのアドバイスの一つとして一読してみることをお薦めいたします。






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