『東洋見聞録 医の巻』
著者 川口澄子
発行 ピエブックス
価格 1365円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸・漢方について興味のある一般の方にお薦めの一冊です。ほんわかしたイラストや文章がこぎみよく楽しい一冊です。専門家にとっても、患者さんと話すときのネタ本になると思います。
この本は、専門家ではない著者が、自分の中医学・漢方体験を糸口にしながら、東洋医学やその周辺を学んでいく、まさに旅的、見聞録的な内容になっています。
そのため本書は、鍼灸師のような専門家にとって臨床的に役立つものではありません。しかし、専門家が気付かない素人なりの疑問点や、東洋医学を試そうとするきっかけを垣間見ることができますので、東洋医学を初めて受診しようとする方の気持ちを知ることができますし、、また、神農のお話や、正倉院のお話しなどは、患者さんとの会話のネタとして面白いかもしれません。そういった意味では、治療院の待合室にでも置いておくのが似合うかもしれません。
本書を必要とするのは、東洋医学に興味を持ち始めた方や、東洋医学の治療(鍼灸・漢方薬・按摩など)を受けてみようと思っている方など、初歩の初歩の方々ではないでしょうか。文章も面白おかしく、イラストも楽しいので、この段階の方にはお勧めです。
監修者には、中国政府より中医師の認定を受けている幸井俊高(こういとしたか)さんが名を連ねていますので、内容に大きな間違いはありません(マクロビオティックのことが混合されていたり、少々中医学や漢方という言葉が強調して区別されているところはありますが)ので、内容は確かなものを感じます。しかし、監修者の方が漢方薬専門の方だからなのか、鍼灸の話題が極端に少ないのは気になりました。これでは、全く知らない方が読んだら、東洋医学(本書では中医学と漢方に分けていますが)は漢方薬が主流であって、鍼灸は別物のような印象を受けてしまいます。バランス的には、もう少し鍼灸も取り上げて欲しかったと思いますが、小さな本で一つの話題に絞ることも必要だったのだと思いますので、これはこれでいいのかもしれません。
いずれにせよ、文章やイラストなどがうまくまとまっており、初歩の初歩の方にとってはおすすめのいい本です。巻末の参考図書一覧は、初歩的な専門家にとってもいい資料ではないかと思います。
『鍼灸の挑戦-自然治癒力を生かす』
著者 松田博公
発行 岩波新書
価格 735円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
一般の方にとっては、鍼灸の流派の違いを知る一冊となり、鍼灸院選びのガイドとなると思います。専門家にとっては、これから主に勉強したい流派の流れを知ることができる一冊です。
現在日本の鍼灸界は、大きく分けて古典派と現代派に分かれます。
鍼灸ができた頃の古い書物に源流を求め、陰陽や五行などの理論を利用して配穴するのが古典派です。それに対して現代派は、現代生理学的な知識や西洋医学的な病名で病態を分類し、主に患部を治療し、場合によっては電気などを使います。同じ身体を診て、同じ鍼という治療道具を用いても、身体の診方や、病態へのアプローチには大きな違いがあります。
このような違いは諸先生の考え方の違いであり、一概にどちらが良いといえるものではありません。これから鍼灸治療を学ぼうとしているものにとっては、自分がどのような鍼灸師になりたいかといいう青写真を描くために、現在の鍼灸にある流派や研究会を知っておくことは大切になりますし、自分の治療技術を磨く場や、信頼できる先生を探しておくことはとても大事なことになります。また、これから鍼灸治療を受けたいと思っている一般の方にとっては、これだけたくさんの鍼灸院がある中で、どこの鍼灸院を選択したら良いのか判断がつきにくいところであります。自分が受けたい治療院を見つけるための基礎知識として、鍼灸にも流派があるということを知っておくと選択しやすくなると思います。
この本は、それぞれに特徴を持った鍼灸家の治療体験や治療方針を、著者自らが各先生の治療を受けながら述べています。著者ははりきゅう免許を取得している方なので、その内容は的確です。そのためこの本は、治療を受ける患者様にとっては、鍼灸治療を選択するガイドになり、鍼灸を勉強している方にとっては、自分の方向性の参考になると思います。その他に、流派を問わずに、鍼灸治療の特徴やこれからのあり方、これから鍼灸治療に求められる側面などを問いかけています。一般の方にも、プロの方にも示唆が多く、現在の鍼灸を理解するとても読みやすい本だと思います。
『漢方の歴史-中国・日本の伝統医学』
著者 小曽戸洋
発行 大修館書店 あじあブックスシリーズ
価格 1680円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・漢方の歴史がコンパクトにまとまっているので、概観するのにとても分かりやすい一冊です。日本の漢方の歴史にも触れているので、とても参考になります。
東洋医学はどのように誕生し、どのように発展していったのか。
東洋医学・鍼灸の源流は、言うまでもなく中国古代文明に端を発していますが、前漢の時代には原典である『黄帝内経』が成立するという成熟と完成を見せています。その後連綿とその思想、技術が世代を超えて受け継がれ、さらに各時代の著名な医家によって発展を遂げ、現在もまた、我々はその恩恵を享受することができています。世界各国には古くから伝わる伝統医療と呼ばれるものが数多くありますが、その中でもこの東洋医学・鍼灸は、中国を発祥地とする伝統医療であり、他の伝統医療よりも完成度が高く、地域や民族、時代を限定せずに、多くの人々の健康の維持や治療に、実際に効果があがっています。今日においても医療として認められ、人々の健康に寄与している鍼灸・漢方薬。人類の歴史から見てもこれほどの長きに渡り利用され、今日も生活に根ざしている医療も稀有であります。
地域や歴史を超え、人類が受け継いできたこの医療は、いったいどのような歴史があるのでしょうか。一般に東洋医学・鍼灸は“伝統医療”という総称の一つに入りますが、その枠に留まらずに広く今日も利用されている東洋医学の歴史を、成り立ちから発展、受け継がれ方、そして中国と日本の展開をそれぞれ分かりやすく解説しています。馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から発見されたミイラのお話など、興味深いものもあります。東洋医学・鍼灸の歴史を学びながら、東洋医学の基本的な考え方にも触れることができる、コンパクトな良書です。著者は現在、北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部部長を勤める医学史のエキスパートですので、内容にも信頼性があるのでおすすめです。
『鍼灸の世界』
著者 呉澤森
発行 集英社新書
価格 714円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
『はり100本』同様に、ある鍼灸師のお話でありますが、一般的な内容で、参考になる点もありますので、星はひとつ多くしておきました。癖のない一冊としてお薦めです。
著者は、上海中医薬大学出身で、WHO中国国際鍼灸センターの指導教官だった中医師。後に北里大学東洋医学総合研究所の招待で来日し、日本のはりきゅう師の資格を取得し、日本国籍を取得した先生です。
内容は著者の歩んできた道のりと、タイトルどおり鍼灸の世界が書かれています。著者自身が上海の中医学出身であることから、中国で学んだことや、当時の中国の情勢が語られ、そして鍼灸についての内容は、鍼灸の中でも、中医学的な鍼灸のお話が多くあります。多少偏りがあるようにも感じますが、一つの方法論を追究する傾向にある鍼灸師にとって、それはいたし方のないことでありますし、それを除いて全体的にみてみた場合、本書の内容はバランスよく、オーソドックスな内容です。『はり100本』が自分の技を誇示するような内容であり、一般的ではないのと比較しますと、こちらはそれほど強い癖や個性はありません。個性的ではないため、正直読み物としての面白みは少ないかもしれません。しかし、個人的な意見としては、個性的なものを最初に学ぶよりは、標準的なものから学んだ方のが良いと思いますし、鍼灸の世界(他の世界もそうかとは思いますが)は、標準的な基礎を作ることなくして個性は発揮できないように思いますので、その点でいきますと、この『鍼灸の世界』は、読みやすく、鍼灸の世界をぐるっと覗いてみるには良いように思います。これから鍼灸を勉強しようと思っている方、鍼灸ってどんなものだろうと興味のある方にとっては、標準的な内容でお勧めです。
『東洋医学の本-心と身体に効く奇跡の療法を探る』 学研
発行 学研
価格 1260円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
学研エソテリカシリーズにありがちな神秘性を含ませているため、お薦め度は☆三つになりましたが、東洋医学・鍼灸医学が含む分野を幅広く解説しているという点で、参考になる一冊です。専門家よりも、一般の方にとっては興味の沸く作りになっています。
この本は、学研のエソテリカシリーズの中に収められている一冊です。このシリーズは仏教、修験道、陰陽道など、あまり一般の方が目に触れないような“異界”に住むものを扱っているシリーズです。そのシリーズの趣旨に漏れず、この本もまた、サブタイトルに「奇跡」という言葉があるように、そういった神秘的な部分がクローズアップされているところは否めません。
東洋医学は、その体系を成してから2000年以上の歴史を持ち、今日も有効活用されている列記とした医療ですので、このようなシリーズの中で語られてしまうのは、正直違和感を覚えます。東洋医学は“奇跡”を起こすような魔術でもなく、神秘主義ではありません。そういった意味で考えますと、この本を強くお勧めすることは出来ませんし、東洋医学に“奇跡”を期待しないで欲しいと願います。
しかしながら、東洋医学の様々な面を取り上げているという部分で、資料的な価値は十分にあるのではないかと思います。東洋医学の流れや、システム、思想、技術的なものが一通り網羅されており、うまく一冊に納まっていると思います。専門の方には話しの種として、一般的な方にはツボの話しなど、東洋医学全般を総覧するのにはいい本だと思います。図や写真なども豊富で、本としても扱いやすくなっています。くれぐれも、東洋医学は神秘なものではなく、長い年月をかけて人類が築いてきた医療体系であることを念頭に置いてお読みください。







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