『五行大義(上)』
『五行大義(下)』
著者 中村璋八・古藤友子著
発行 明治書院
価格 上巻7350円(税込み)
下巻6090円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
陰陽五行思想の原典ともいえる書物。『五行大儀』の大家でもある中村璋八先生の解説ですので、参考資料として揃えておきたいものです。
東洋医学とは、狭義の意味では古代中国文明から発祥した医療体系を指します。そのために、東洋医学の根底には、中国の思想である陰陽説、五行説といったものがあります。この根底にある中国思想の理解なくして、鍼灸、特に古典的な治療をすることは出来ません。木→火→土→金→水という相生関係や、木剋土、土剋水といった相克関係などは制化の関係とも呼ばれ、病症部位の把握、証の決定、配穴など、あらゆる場面で活用していかなくてはなりません。単なる思想の枠を超え、身体を理解するためにも応用できるところに、五行説の奥深さを知ることができます。
この五行についての百科辞典が、この『五行大義』です。この明治書院の『五行大義』は、本文、書き下し文、そしてその訳など、とにかく詳細に記されています。著者である中村璋八先生は、鍼灸の学会での講演歴も多くある方で、陰陽道などにも詳しい、五行のエキスパートであります。難解な部分も、平易に解説してくれていますので、お勧めです。五行学説をまとめた本は他にもありますが、こういった原著を持っていることは、何かのときに辞書的な利用としても役に立つものです。少々効果ではありますが、古典的な鍼灸を求めている方には、ぜひともそばに置いておくことをお勧めいたします。
後述していますが、同じ中村璋八先生の五行の入門書に、『陰陽五行学説入門』 中村璋八著 たにぐち書店というものがあります。こちらもご参考になってみてください。
中村璋八先生の他の著書
『五行大儀』(明徳出版)・・・コンパクトサイズです。
『陰陽五行学説入門』(たにぐち書店)・・・陰陽五行を解説した中国の本の翻訳。
『陰陽五行説 その発展と展開』
著者 根本幸夫・根井養智著
発行 じぼう
価格 3864円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
陰陽五行説の成り立ち、歴史、文献などが幅広く網羅されています。医学へ応用された陰陽五行学説の解説はもちろん充実していますが、それ以外の解説も充実していますので、一冊はそろえて読んでおきたいものです。
古典的な鍼灸治療をマスターするためには、五行の概念をうまく使う必要があります。五臓の五行、感情の五行、五行穴など、臨床において活用される五行は多く、五行と鍼灸臨床は切っても切れない関係にあります。五行といいますと、五角形の相生相克の関係をすぐに頭に思い浮かべると思いますが、教科書レベルの理解では、それを応用するところまでなかなかたどり着けるものではないと思います。そのため、五行はよく出来た考え方ではあると知りつつも、臨床ではあくまで参考程度にしか取り入れない鍼灸師も多く、また、参考にするくらいならまだいいほうで、完全に迷信として捨て去ってしまう鍼灸師の方も少なくありません。たしかに五行とは、もともと自然哲学、思想的な部分が強いため、現代科学的な医学とのギャップがあると思うのも仕方のないことだと思います。しかしまた同時に、五行の概念を臨床に取り入れて、大きな成果を上げている先生も多く、また古来より受け継がれてきた東洋医学の歴史が、五行の有用性を無言のままに訴えているように思えてなりません。
本書では、五行思想の深い考察が最初の章でなされており、どのような背景で五行という考え方が発生したのかを、『淮南子』『呂氏春秋』『易経』などの東洋思想の本を引用しながら説明しています。さらに章を進めて、五行思想と医学の結びつきを順序だてて解説しています。
本書では、五行論、陰陽論の発生、展開という歴史や基礎理論はさることながら、五臓六腑と五行説の関係も詳述されており、また、色体表の一行一行を解説しているので、五行を十二分に修得することができる、申し分のない一冊です。
『東洋医学・鍼灸を学ぼう!』では、次に『陰陽五行学説入門』 中村璋八・中村敞子共訳 たにぐち書店という本をご紹介しておきます。
どちらも五行学説を学ぶ本としてお薦めです。
『陰陽五行学説入門』
著者 中村璋八・中村敞子共訳
発行 たにぐち書店
価格 3150円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の基本である陰陽五行学説を、分かりやすくまとめています。古典的な鍼灸治療を学びたい方には、最初に読んでおきたいテキストです。
本書は題名通り、陰陽五行学説の入門書です。上に取り上げました『陰陽五行説 その発展と展開』 根本幸夫・根井養智著 じぼうと比較しまして、ページ数も薄く、五行の基本的な考え方を主に取り上げています。
東洋医学や鍼灸医学を学ぶ際に、どうしても身についておきたい考え方が、陰陽論であり五行論です。この陰陽五行は、とてもシンプルで分かりやすい考え方ですが、実際にどこまで有効なものか、どこまで治療に活かせるのかということになると、尻込みをしてしまう治療家の方も少なくありません。また逆に、陰陽五行を巧みに使うことが出来る治療家にとっては、これほど便利で、これほど有効なものはないとおっしゃることでしょう。
この本の原書は、内蒙古医学院中医系主編の『自学中医之道』叢書に含まれたものを翻訳したものです。原著は中国各地の中医学院の校閲を経た権威あるもので、内容は、現在中国で学ばれているスタンダードな五行学説が書かれています。そのため、内容はまさにベーシックで、“入門”となっています。しかし、入門といいましても、内容はとても深く、参考に出来る箇所は入門者のみならず、中級者以上にとっても多くあります。また、ある程度学問が進み、確認するためにもう一度読んでみると、新たな発見や気づきがあるのも、本書が良書であることを示しています。
訳者はすでにご紹介している『五行大義(上)』『五行大義(下)』の中村璋八先生と、その奥様でいらっしゃる中村敞子先生のよるものです。陰陽五行学説の入門書としてぜひとも一読しておきたいものです。
『気の思想-中国における自然観と人間観の展開』
著者 山井湧・小野沢精一・福永光司など
発行 東京大学出版会
価格 10500円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
東洋思想を貫く“気の思想”をあらゆる面から検討した本です。
東洋医学を特徴づける概念の一つに“気”というものがありますが、“気”は目に見えないために、未だに現代の科学では実証することが難しく、そのために、その存在を否定されたり、また治療者においても、闇雲に“気”という言葉を濫用してしまい、混乱を招いたいり、どうもそれが東洋医学や鍼灸医療が非科学的で怪しいものと思われる要素の一つになっているように思います。一般の方はまだしも、鍼灸師たるもの、“気”という言葉を使う以上は、“気”というものが一体何であるか、どういった学問的背景の元に使用されてきたのかを把握しておくことが大切になるのではないでしょうか。“気”の思想を学ぶことは、鍼灸治療というものを理解することにも役立ちますし、患者さんへの説明という意味でも必要な学問となります。
臨床をしながら古医書を読んでおりますと、改めて“気”という言葉が何であるのか知りたくなるものです。“気”という概念、“気”という言葉が産まれた中国における自然観、人間観はいったいどのようなものだったのでしょうか?
この“気”という概念は、もとは中国哲学・中国思想に基づくものです。この気という概念を、身体や身体と病気の成り立ちに応用して出来上がったのが東洋医学であり、鍼灸医学であります。このことから、“気”というものは、目に見えないから存在しないという単純なものではなく、様々な分野に応用可能なもので、広範な意味を持っています。そして、その存在を前提として行われる鍼灸治療が、体調を回復させ、病を治していくという事実があります。これは、紛れもなく、“気”というものが存在していることの証でもあると思います。
この『気の思想-中国における自然観と人間観の展開』では、様々な側面から“気”という言葉の成り立ちを考察しています。“気”という境界線がはっきりしない言葉を扱った本ですので、かなり内容はハードなものですが、医学に応用された“気”のお話のところだけでも読んでおくと良いかと思います。
『中国思想を考えるー未来を開く伝統』
著者 金谷治
発行 中公新書
価格 777円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋思想の第一人者が、中国思想をわかりやすく解説してくれる好著です。中国思想は決して過去のものではなく、未来を開く、常に新しい要素を持った学問であることを再認識させられます。
狭義の東洋医学という言葉が示す範囲は、“中国発祥の医療”という地域が限定されたものになりますが、そこには鍼灸、漢方薬、導引などが含まれます。これらの基礎にある五行学説、陰陽論といったものは、全て中国思想・中国哲学に由来しています。古典的な鍼灸や、古典的な漢方薬の処方をするには、必ずこの五行論や陰陽論を駆使しなくてはいけませんが、そのためだけに、中国思想や中国哲学を学ぶことは、必須ではありません。中国思想を知らなくても、治療はできます。しかし、これらを学ぶことによって、自分が行う治療内容の奥深さを知ることができます。この奥深さを知ることは、本当の意味での精・気・神を知ることにつながり、それは、自分の治療の幅を広げることにもなります。また、このような中国思想を理解しておくことは、古医書を読むときにもとても役に立つバックボーンになります。
東洋医学・鍼灸医学の概念として、精・気・神という三つはとても大切になりますが、例えば、精は父母から受け継いだ生命力と理解されます。この精を預かる生命を尊重することは、つまり、その受け継いだ元の父母を敬うことにつながり、ここから儒教の孝の思想が生まれ、それがまた養生の考え方にもつながっていきました。
この本は、そういった中国思想の基本的な考え方を、平易な文章で丁寧に書いてあります。中国思想・中国哲学の入門書として、そして、一歩先をゆく臨床家を目指す方にお勧めの一書です。








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