『漢方の歴史-中国・日本の伝統医学』
著者 小曽戸洋
発行 大修館書店 あじあブックスシリーズ
価格 1680円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・漢方の歴史がコンパクトにまとまっているので、概観するのにとても分かりやすい一冊です。日本の漢方の歴史にも触れているので、とても参考になります。
東洋医学はどのように誕生し、どのように発展していったのか。
東洋医学・鍼灸の源流は、言うまでもなく中国古代文明に端を発していますが、前漢の時代には原典である『黄帝内経』が成立するという成熟と完成を見せています。その後連綿とその思想、技術が世代を超えて受け継がれ、さらに各時代の著名な医家によって発展を遂げ、現在もまた、我々はその恩恵を享受することができています。世界各国には古くから伝わる伝統医療と呼ばれるものが数多くありますが、その中でもこの東洋医学・鍼灸は、中国を発祥地とする伝統医療であり、他の伝統医療よりも完成度が高く、地域や民族、時代を限定せずに、多くの人々の健康の維持や治療に、実際に効果があがっています。今日においても医療として認められ、人々の健康に寄与している鍼灸・漢方薬。人類の歴史から見てもこれほどの長きに渡り利用され、今日も生活に根ざしている医療も稀有であります。
地域や歴史を超え、人類が受け継いできたこの医療は、いったいどのような歴史があるのでしょうか。一般に東洋医学・鍼灸は“伝統医療”という総称の一つに入りますが、その枠に留まらずに広く今日も利用されている東洋医学の歴史を、成り立ちから発展、受け継がれ方、そして中国と日本の展開をそれぞれ分かりやすく解説しています。馬王堆漢墓(まおうたいかんぼ)から発見されたミイラのお話など、興味深いものもあります。東洋医学・鍼灸の歴史を学びながら、東洋医学の基本的な考え方にも触れることができる、コンパクトな良書です。著者は現在、北里研究所東洋医学総合研究所医史学研究部部長を勤める医学史のエキスパートですので、内容にも信頼性があるのでおすすめです。
『まんが黄帝内経-中国古代の養生奇書』
著者 張恵悌著
発行 医道の日本社
価格 1470円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の原典である『黄帝内経』を、大雑把ではありますが、イラストによって全体をイメージして捉えることができます。東洋医学・鍼灸を学び始めた頃に、古典への扉として手にしたい一冊です。
東洋医学・鍼灸の原典である『黄帝内経』は、前漢の時代に完成されたといわれており、その内容はとても深く広く、身体の生理学、病理学、治療学、養生学など、身体についての総合書となっています。東洋医学・鍼灸医療の理論背景には陰陽論、五行論などの中国思想が深く関わっていますが、そういった理論・思想を基盤にしながら徐々に身体と病気を理解し、医療として発展しました。2000年もの前にすでに医学として体系化されていたことには驚きに値します。現在も廃れることなく、東洋医学や鍼灸の臨床で頻繁に活用されており、現在でも“原典”として燦然と光を輝かせています。
伝統的な鍼灸をしている方はもちろん、現代的な鍼灸をしている方にとっても、東洋医学・鍼灸医学を志し、実践しているのであれば、原典中の原典であるこの『黄帝内経』を避けて通ることはできないと思われます。
しかし、『黄帝内経』の原著はもちろん当時の漢文で書かれており、かつ簡潔に書かれているため、初心者にとって最初から読むことは困難です。いきなり難解なものに手を出してこれはとても読めないと投げ出してしまうと、今後『黄帝内経』を手に取ることすらなくなってしまいますので、その前に、まずは古医書の考え方に馴染むことも、初期の段階では大切でもあります。この『まんが黄帝内経-中国古代の養生奇書』は、『黄帝内経』の基本的な考え方で、重要なものをわかりやすく漫画形式で描いてくれています。まずは楽しみながら親しんでみる、そしていつか原著を読む前の橋渡し役という意味では、なかなかの好著だと思いますので、初めて『黄帝内経』に触れる方にもお奨めです。
古医書医学を志す者としては、あくまで原著に当たれるようになることが、今後の心構えとして大切ですので、いつかはこの本は卒業し、徐々に原典に触れるように心がけておくとよいかと思います。
『図説 東洋医学 基礎編』
著者 山田光胤・代田文彦著
発行 学研
価格 5097円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
とても分かりやすい本で、東洋医学・鍼灸医学を学び始めた方に特にお薦めです。イラストや図もふんだんにあり、レイアウトもよく、『黄帝内経』の理解や、東洋医学全体を理解できる好著です。
初版は1979年に発行された本ですが、いまだに発行を続けているところに、この本の信頼度があります。内容は、東洋医学の基礎を一から平易に述べていったスタンダードなものであり、図が豊富に付されているので、とても分かりやすくなっています。東洋医学を最初に学ぶとき、まず初めに東洋医学で使われる基本的な用語の理解が必要です。この理解に躓きますと、学習が進んでいったこの先の段階で壁にぶち当たることになります。鍼灸治療は、学問と実践が車の両輪になって、どちらも欠くことなくお互いを研鑽しながら上達していくものですが、そのためには学問の基礎を作っておく必要があります。この本は、その基礎を理解するためにとてもお勧めです。著者の山田光胤・代田文彦両氏は、東洋医学に精通した先生でありますので、記述も安定しており、両者の講義を受けているようで、イメージがわきやすくなっています。
鍼灸や東洋医学を学び始めた初学者が最適な対象となるかと思いますが、一般の方が読んでもわかりやすい内容になっています。辞書的な本としても一冊あると便利かもしれません。
『中国医学の歴史』
著者 行維康(編集)・川井正久(翻訳)など
発行 東洋学術出版社
価格 6615円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の歴史(中国におけるもののみ)を、古代から近代まで網羅した百科事典的な資料としてお薦めです。索引も充実しており、掲載されている人物や書物も、細かいところまでカバーしています。
東洋医学は、広義には中国医学と同義に扱われていますが、この中国で起きた伝統医療は、はるか昔の古代中国に遡ります。その起源をどこに持ってくるかということに様々な定義があるかと思いますが、鍼灸で言えば、動物の骨を使用して行っていた形跡もあるとかで、文字が発明される以前からその萌芽はあったようです。文字が発明されてからは、まず、卜占に使用された甲骨文字の中に、病気に関して神事を求めたものがあるようで、人類が病気というものに意識して対峙した初めての記述の一つに挙げられます。このときはまだ医療というよりは、占いやまじないの類の面が色濃かったようです。そして陰陽五行や、経絡・経穴の発見などがあいまって、徐々に体系が形作られて『黄帝内経』の確立へつながっていきます。『黄帝内経』が原典として確立してからは、各時代の名医達が研鑽を重ね、『黄帝内経』をベースにしながら発展を続けてきました。
中国医学には、主に鍼灸と湯液(漢方薬)の2方面があります。湯液は生薬の数も多く、薬方も数多く発明されてきたために、宋以降は鍼灸よりもメインになっていったようなところがあります。
古医書を読む上で、その古医書が書かれた時代背景や、人物について知っておくことも大切な要素となります。どういった考えで書かれた本なのかを理解して読みますと、その古医書の伝えんとする趣旨が伝わることがあります。この本は、中国医学の百科事典と言える内容で、人物や古医書の書名、そして時代背景なども細かに書かれています。『漢方の歴史-中国・日本の伝統医学』は一般の方にも読みやすいボリュームですが、こちらは膨大な資料ですので、主に専門家にとって重宝する一冊になると思います。
『東洋医学の本-心と身体に効く奇跡の療法を探る』 学研
発行 学研
価格 1260円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
学研エソテリカシリーズにありがちな神秘性を含ませているため、お薦め度は☆三つになりましたが、東洋医学・鍼灸医学が含む分野を幅広く解説しているという点で、参考になる一冊です。専門家よりも、一般の方にとっては興味の沸く作りになっています。
この本は、学研のエソテリカシリーズの中に収められている一冊です。このシリーズは仏教、修験道、陰陽道など、あまり一般の方が目に触れないような“異界”に住むものを扱っているシリーズです。そのシリーズの趣旨に漏れず、この本もまた、サブタイトルに「奇跡」という言葉があるように、そういった神秘的な部分がクローズアップされているところは否めません。
東洋医学は、その体系を成してから2000年以上の歴史を持ち、今日も有効活用されている列記とした医療ですので、このようなシリーズの中で語られてしまうのは、正直違和感を覚えます。東洋医学は“奇跡”を起こすような魔術でもなく、神秘主義ではありません。そういった意味で考えますと、この本を強くお勧めすることは出来ませんし、東洋医学に“奇跡”を期待しないで欲しいと願います。
しかしながら、東洋医学の様々な面を取り上げているという部分で、資料的な価値は十分にあるのではないかと思います。東洋医学の流れや、システム、思想、技術的なものが一通り網羅されており、うまく一冊に納まっていると思います。専門の方には話しの種として、一般的な方にはツボの話しなど、東洋医学全般を総覧するのにはいい本だと思います。図や写真なども豊富で、本としても扱いやすくなっています。くれぐれも、東洋医学は神秘なものではなく、長い年月をかけて人類が築いてきた医療体系であることを念頭に置いてお読みください。







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