『難経の研究』
著者 本間祥白
発行 医道の日本社
価格 3990円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
昭和初期に、古典的な鍼灸を求めて集まった経絡治療のグループの一人であった本間祥白先生渾身の作品。『難経本義』など、これまでの『難経』の注釈本に並ぶ歴史的な一冊といっても過言ではありません。経絡治療を学ぶ方には必読です。
『黄帝内経』と並んで鍼灸のバイブル的存在として『難経』という本があります。これは、『黄帝内経』をベースにしながら、より実践的、臨床的な部分を81の章にまとめて書かれたと言われ、著者は扁鵲とも言われています。
経絡治療の元となる「虚したらその母を補い、実したらその子を瀉す」とは、『難経』の六十九難から来ています。その他の記述もすべて臨床に役立つことばかりで、無駄のないエッセンスが凝縮された内容になっています。
しかし原典に書かれた本文はとても簡潔な文章で、その文が示す中身を理解するのは容易ではありません。『難経』が世に生まれてから、様々な医家が解説をしており、その中でも元の時代の滑伯人(滑寿)の書いた『難経本義』などは日本でも親しまれてきた古医書の一つです。
本書『難経の研究』は、経絡治療草創期の本間祥白氏によって書かれた本で、『難経』を読み始める古医書初心者の方にはお奨めです。本間先生は、上述した『難経本義』をはじめ、当時にあっても多くの原著を読まれている方なので、原典に触れている著者の幅広い知識と、その内容の的確さがそこにはあります。初版が発行されて40年以上経ちますが、その内容は未だに示唆が多く、経絡治療、本治法、古典的な鍼灸術を学ぶときには、常に傍に置いておきたい一冊です。
またこの本は、本間先生の遺作ともなりました。序文には、本間先生の師匠であった井上恵理先生のお話などもあり、日本経絡治療の基礎を築いた方々の遺志を今に伝えています。
『現代語訳 黄帝内経 素問』 上巻
『現代語訳 黄帝内経 素問』 中巻
『現代語訳 黄帝内経 素問』 下巻
著者
南京中医学院
島田隆司・石田秀美他訳
発行 東洋学術出版
価格
上巻 10500円(税込み)
中巻 9975円(税込み)
下巻 12600円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
『黄帝内経・素問』の原文、読み下し文、解説が揃った本です。少々お高いですが、内容と鍼灸師としての必要性を考えると、揃えておきたい本です。
『黄帝内経』は、東洋医学・鍼灸医学の原典と呼べる位置にある本です。この本の原型は2000年前にすでに完成されていたと言われていますが、完成されて以後、多くの医家が解釈を加え、東洋医学の世界を広げていきました。今日においても、尚この『黄帝内経』は、東洋医学を志す者にとっては、見過ごすことが出来ない原典です。
原文は簡潔に書かれておりますので、本文だけを読んだだけではなかなか中身を理解することは難しいところがあります。また、鍼灸医学・東洋医学の中でも、古典的な治療を目指す方にとっては、原文が持っているニュアンスを組んでいくことが大切になりますので、出来れば、いずれ原文である漢文に挑戦してほしいところです。しかし最初は漢文を読みなれていないと、いきなり原文に当たることは難しく、途中で挫折してしまい、原文そのものから離れてしまうということになりかねません。
その点この『現代語訳 黄帝内経 素問』 上巻は、原文と読み下し文、さらには日本語の現代語訳、語句の解説などが併記されていますので、読みやすいと思います。現代語訳の中には、少々各先生が独自に意訳をしているところもあり、全てをそのまま受け入れることには難もありますが、一つの解釈の参考になりますので、古典、『黄帝内経』に親しむ本としては適していると思います。
訳者の一人である故・島田隆司先生は、長年経絡学会(現・伝統鍼灸学会)の会長を務めた方でもあります。
『現代語訳 黄帝内経 霊枢』 上巻
『現代語訳 黄帝内経 霊枢』 下巻
著者
南京中医学院
石田秀美・白杉悦雄訳
発行 東洋学術出版
価格
上巻 11550円(税込み)
下巻 11550円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
『黄帝内経・霊枢』の原文、読み下し文、解説が揃った本です。少々お高いですが、内容と鍼灸師としての必要性を考えると、揃えておきたい本です。
上述しました『現代語訳 黄帝内経 素問』 上巻の『霊枢』版ですので、内容などは上述の記述を参考にしてください。
『素問』と『霊枢』は原典として兄弟、姉妹のような存在です。『素問』とともに、こちらもそろえておくことをお勧めいたします。
『東洋見聞録 医の巻』
著者 川口澄子
発行 ピエブックス
価格 1365円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸・漢方について興味のある一般の方にお薦めの一冊です。ほんわかしたイラストや文章がこぎみよく楽しい一冊です。専門家にとっても、患者さんと話すときのネタ本になると思います。
この本は、専門家ではない著者が、自分の中医学・漢方体験を糸口にしながら、東洋医学やその周辺を学んでいく、まさに旅的、見聞録的な内容になっています。
そのため本書は、鍼灸師のような専門家にとって臨床的に役立つものではありません。しかし、専門家が気付かない素人なりの疑問点や、東洋医学を試そうとするきっかけを垣間見ることができますので、東洋医学を初めて受診しようとする方の気持ちを知ることができますし、、また、神農のお話や、正倉院のお話しなどは、患者さんとの会話のネタとして面白いかもしれません。そういった意味では、治療院の待合室にでも置いておくのが似合うかもしれません。
本書を必要とするのは、東洋医学に興味を持ち始めた方や、東洋医学の治療(鍼灸・漢方薬・按摩など)を受けてみようと思っている方など、初歩の初歩の方々ではないでしょうか。文章も面白おかしく、イラストも楽しいので、この段階の方にはお勧めです。
監修者には、中国政府より中医師の認定を受けている幸井俊高(こういとしたか)さんが名を連ねていますので、内容に大きな間違いはありません(マクロビオティックのことが混合されていたり、少々中医学や漢方という言葉が強調して区別されているところはありますが)ので、内容は確かなものを感じます。しかし、監修者の方が漢方薬専門の方だからなのか、鍼灸の話題が極端に少ないのは気になりました。これでは、全く知らない方が読んだら、東洋医学(本書では中医学と漢方に分けていますが)は漢方薬が主流であって、鍼灸は別物のような印象を受けてしまいます。バランス的には、もう少し鍼灸も取り上げて欲しかったと思いますが、小さな本で一つの話題に絞ることも必要だったのだと思いますので、これはこれでいいのかもしれません。
いずれにせよ、文章やイラストなどがうまくまとまっており、初歩の初歩の方にとってはおすすめのいい本です。巻末の参考図書一覧は、初歩的な専門家にとってもいい資料ではないかと思います。

※ 現在、講談社現代新書は装丁が一新していますので、この写真とは異なる表紙になっていますので、本屋さんで探すときはご注意ください。
『「気」で観る人体-経絡とツボのネットワーク』
著者 池上正治
発行 講談社現代新書
価格 756円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸・漢方について興味のある一般の方や、専門の方も読める内容で、特に経絡・ツボについて知りたい方にお薦めです。
この本では、まず東洋医学独特の概念である「気」というものを、中国文化の中での成り立ち方やその概念を説明し、それが医学にも応用されてきた歴史を考察しています。中国哲学・中国思想は、「気」というものをキーワードにして成立した学問体系ですが、現在は人文科学の分野で扱われています。しかしそれが自然界にも通じ、医学にも応用できるということになると、これは自然科学の分野にも入ってきます。つまり、「気」という学問は、文系、理系というものに分断するものではなく、両者が混在した世界観といえるのではないでしょうか。そういったことを含めた中国医学の「気」という視点で、その気が流れる経絡、気が集まるツボというものを述べたのがこの本です。
この本は、経絡の流注の順番で書いてあるので、とてもまとまった印象を受けます。鍼灸学校に入りますと、経絡経穴概論という授業がありますが、これはひたすら経絡と、その経絡上にあるツボの名前と場所を覚えることに費やされる授業です。ともすると退屈な暗記科目になりがちですが、この書物をそばに置いておきますと、経絡を学ぶことに興味を持つことができるようになると思います。流注順ですので、順番に追っていけるのが本書のよいところです。また新書なので、鍼灸学校の行き帰りの電車の中でも少しずつ開いては読むことができるのではないでしょうか。








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