『戦国武将の養生訓』
著者 山崎光夫
発行 新潮新書
価格 735円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
室町・安土桃山時代に、当代きっての名医として活躍した曲直瀬道三が、どのような医療観の持ち主であったのかを垣間見ることができ、とても興味深い資料です。戦国武将がいかに身体を大切にしたかもわかります。日本の東洋医学・鍼灸医学・漢方の独自の発達の一端を知ることができます。
室町・安土桃山時代に活躍した曲直瀬道三(まなせどうざん)と呼ばれる医家がおります。現在では「日本医学中興の祖」と称えられています。曲直瀬道三は、当初仏道を志しておりましたが、現在の栃木県の足利学校へ遊学した際に、その後の師匠となる医家・田代三喜(たしろさんき)に運命的な出会いを果たし、医学の道に進むことになりました。田代三喜は、その時代に普及していた『和剤局方(わざいきょくほう)』を重宝に扱っている医療界を批判し、陰陽、虚実といった本来の漢方医学(東洋医学)に基づいた医療に立ち返ることを主張しました。曲直瀬道三はその講義に魅了され、田代三喜の弟子として、師匠が亡くなるまで13年間師事をしていました。
その後田代三喜の実績を継承、発展させていき、足利義輝、毛利元就、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康など、錚々たる戦国武将の主治医として活躍しました。特に毛利元就には厚遇され、元就の家臣たちに医学の講義をしております。さらに元就は道三に対し、毛利家繁栄の道と諍諫(そうかん・争いを諌める)の方法を問い、道三は『雖知苦斎一渓道三言上目録』というものを献上し、これは毛利家の家訓にもなりました。
現在毛利博物館に、曲直瀬道三直筆の『養生誹諧』という本が納められています。これは道三がしたためた養生に関わる120首の歌を集めたもので、漢詩にも造詣が深かった道三の知識もさることながら、全編ユーモアに満ちながら、養生方法や、健康のありがたさを分かりやすく説いています。この『戦国武将の養生訓』 山崎光夫著 新潮新書では、その『養生誹諧』の歌に並んで、意訳と解説が書いてあり、とても読みやすくまとまっています。
『戦国武将の養生訓』 山崎光夫著 新潮新書には、『養生誹諧』に続き、道三が著した『黄素妙論』という房中術に関する本文と解説も掲載されています。房中術とは、SEX(セックス)でありますが、当時はお世継ぎを作るためにはとても大切なものであり、また、身体にとって重要な先天の気である“精”をいかに守っていくかということが求められていました。本来医療とはかけ離れているように思えますが、これもまた一つの養生法であり、健康を保つ秘結となります。現在は不妊症も多く、セックスレスの夫婦も多いと聞きます。そのような意味からも、性生活のあり方を曲直瀬道三から学ぶことも一つの解決になるかもしれません。
曲直瀬道三は、京都の十念寺に眠っております。京都を訪れた際、お時間がありましたら“日本医学の中興の祖”に感謝を届けに行くのもいいかもしれません。
京都・十念寺
『Acupuncture Meridian Theory and Acupuncture Points』
発行 Foreign Language Press
価格 5291円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
主に経絡・経穴を開設した英語の本です。英語の本で学習したい方、英語の本をお探しの方にお薦めの一冊です。
表参道・青山・源保堂鍼灸院には、外国人の方も、多数治療を受けにいらっしゃいます。そのときに困るのが英語で東洋医学を伝えることです。ある程度英語で会話ができても、東洋医学・鍼灸医療の専門語や、独特の世界観や概念を伝えるのは難しいところがあります。特に表参道・青山・源保堂鍼灸院のように、古典的な治療をしている場合は、なおさら難しさを感じるものです。
この『Acupuncture Meridian Theory and Acupuncture Points』は洋書なのですが、東洋医学・鍼灸医療の大まかなことが書かれているので、十分な内容になっています。外国人の患者さんが多い治療院や、英語で治療をしなくてはいけない場面の多い方には重宝すると思います。そういったことがない場合でも、英語の勉強になるのでお奨めです。
『口語 養生訓』
著者 貝原益軒
翻訳 松宮光伸
発行 日本評論社
価格 2415円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
平易な現代語訳で読みやすくなっていますので、原文よりも中身を知りたい方にはお奨めです。本書はハードカバーです。
『養生訓・和俗童子訓』
著者 貝原益軒
翻訳 石川謙
発行 岩波文庫
価格 735円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
最もオーソドックスなものだと思います。原文もあります。文庫本なので、電車に乗りながら読めるのでお忙しい方にもお奨めです。
江戸時代前半の時代を生きた貝原益軒(1630年12月17日~1714年10月5日)。儒学者としても著名であり、生涯に渡り著した書物の数は六十部二百七十余巻に及び、様々な分野に博識であったそうです。益軒が著した書物の中でも、最も多くの人に親しまれ、そして今日まで彼の業績を語る上で最も有名なものが、『養生訓』ではないでしょうか。
彼自身は83歳の天命を全うしましたが、当時としてはかなりの長命であり、また、最後まで健康であり、まさに“長寿を全うする”ことを自ら体現したともいえます。
『養生訓』の内容は平易なことも多いのですが、改めて読むことでその平易さの中にある奥深さを知ることができます。人が健康に一生を過ごすということは、江戸時代にあっても、現代にあっても容易なことではありません。しかし、貝原益軒は自ら実践して養生の大切さを現代に伝えています。
現代に生きる知恵としても、とても役に立ち示唆に富んだ内容になっています。益軒は医学を専門にしたわけではありませんが、『大和本草』を現したり、また『養生訓』の中でもいくつか中国の古医書を引用していますので、その内容には信頼性があり、東洋医学の基本的な見方を知ることもできます。初心者的に読むこともできますし、ある程度知識が豊富になったところで読み返しても新たな発見がある本です。
『養生訓ほか(中公クラシックス)』
著者 貝原益軒
翻訳 松田道雄
発行 中央公論新社
価格 1575円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
新書の大きさで読みやすいフォントを使っています。残念ながら原文がないので☆三つですが、貝原益軒の『楽訓』を通して読めるのは現在これだけのようなので、貴重な一冊です。
貝原益軒は、最晩年に『楽訓』という本を書いております。この本の内容は、そのタイトル通り、人生を楽しむライフスタイルを提案したもので、時間に追われたり、仕事に追われる現代人にも、“楽に生きる”ことの楽しさを伝えてくれます。『養生訓』があまりにも有名なために埋もれてしまっていますが、この『楽訓』もまた、多くの人に読んでいただきたい内容です。
こちらの『養生訓ほか(中公クラシックス)』は、『養生訓』だけではなく、『楽訓』も収録されていますので、両者を読みたい方にはお奨めです。どちらも平易な現代語で書かれています(原文はありません)。
『図解入門 よくわかる黄帝内経の基本としくみ』
著者 左合昌美
発行 秀和システム
価格 1890円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆
『黄帝内経』の基本を理解するのによい本です。一般的な入門書というよりは、東洋医学や鍼灸医学を専門的に学び始めた初心者の方に特にお薦めです。少し著者自身の個性的解釈が入っているので、その分、☆三つになります。
最近では鍼灸に限らず、エステや美容の世界でも“東洋医学”という言葉が使われるようになりました。しかしながら、実際に東洋医学の神髄がそこに活かされているのかというと、正直疑問なところもあります。このような現状を見るにつけ、個人的には、東洋医学・鍼灸を看板に出している者は、その原点である『黄帝内経』を読むことは必須であると思います。それは、そこに東洋医学の神髄があり、そこから発展してきた医療だからです。
東洋医学に流れる思想や哲学、また時代の風雪を耐えてきた歴史を感じるためにも、できれば原文で読むことが望ましいと思います。原文はお手上げだという人も、少なくとも原文の読み下し文など、欠けることなく通読しておくことをお奨めいたします。
しかしながら、いきなり原文に当たるのは困難です。原文そのものは簡潔に書いてありますし、基本的な用語や概念を知っていないと、理解しながら読み進めていくことはなかなか難しものです。そこでまずは、原文に当たる前の段階として、『黄帝内経』が書かれた思想的背景を、大まかでも把握しておく必要があります。そのためには入門書が必要となりますが、では、入門だから入門書は簡単に書かれていればどれでも良いとうわけではありません。東洋医学・鍼灸を学ぶためには、最初に手にする本こそ大事になります。最初に読んだ入門書が、あまりに稚拙だったり、間違ったものであったり、著者の個性がですぎていたりしますと、それが後々まで自分の癖として固まってしまい、新たな本を読んだときに融通が利かなくなることがあります。そこで入門書こそ、大切に選びたいものです。
ここに紹介しまた『図解入門 よくわかる黄帝内経の基本としくみ』は、日本内経医学学会に所属する左合昌美先生が書いた者で、入門書として図解も多いので理解しやすいと思います。ただしあくまで入門書でありますので、その息での理解のための本と思っておいた方がよいでしょう。また、この本は、臨床をしている先生が書いた本と言うよりは、『黄帝内経』の研究者としての本という印象を受けますので、あくまで『黄帝内経』の基本的概念を理解する本という利用が良いかと思います。
『東洋医学見聞録【上巻】』
著者 西田皓一
発行 医道の日本
価格 3360円(税込み)
対象 一般 ☆☆☆
専門 ☆☆☆☆
- 収録内容 -
〈第1篇〉東洋医学との出合い
〈第2篇〉肩凝りの治療
〈第3篇〉頚椎症の治療~寝違いと鞭打ち症~
〈第4篇〉肩関節疾患の治療
~五十肩、肩の捻挫、打撲、スポーツ障害、関節炎など~
〈第5篇〉腰痛の治療
〈第6篇〉膝関節の治療
〈第7篇〉皮膚疾患の治療
〈第8篇〉ストレス性疾患の治療
〈第9篇〉シャックリの治療
〈第10篇〉逆子(異常胎位)の治療
〈第11篇〉アレルギー性鼻炎の治療
〈第12篇〉気功遍歴
『東洋医学見聞録【中巻】』
著者 西田皓一
発行 医道の日本
価格 3360円(税込み)
対象 一般 ☆☆☆
専門 ☆☆☆☆
- 収録内容 -
〈第1篇〉陰陽交叉取穴法
〈第2篇〉頭痛の治療
〈第3篇〉風邪の治療
〈第4篇〉梅核気の治療
〈第5篇〉歯科領域の治療
〈第6篇〉末梢性顔面神経麻痺(ベル麻痺)の治療
〈第7篇〉パニック障害と不眠症の治療~頚叢刺法を用いて~
〈第8篇〉肋間神経痛の治療
〈第9篇〉痛風発作の治療
〈第10篇〉棘下筋症候群の経筋療法
〈第11篇〉上腕挙上障害の治療
〈第12篇〉腕神経叢症候群の治療
〈第13篇〉梨状筋症候群の治療
〈第14篇〉坐骨結節部痛の治療
〈第15篇〉消化器疾患の治療
〈第16篇〉薬食同源
『東洋医学見聞録【下巻】』
著者 西田皓一
発行 医道の日本
価格 3360円(税込み)
対象 一般 ☆☆☆
専門 ☆☆☆☆
- 収録内容 -
〈第1篇〉膝関節痛の経筋療法
〈第2篇〉肘関節痛(テニス肘など)の治療
〈第3篇〉股関節部痛の治療
〈第4篇〉踵部痛の治療
〈第5篇〉胸肋痛の一鍼療法
〈第6篇〉腰部筋肉の疲れの治療
〈第7篇〉顔面筋痙攣の治療
〈第8篇〉線維筋痛症とその鍼灸治療
〈第9篇〉慢性疲労症候群の鍼灸治療
〈第10篇〉神経症の経筋療法
〈第11篇〉うつ状態の治療
〈第12篇〉泌尿器の慢性炎症性疾患の治療
〈第13篇〉口腔内と口周辺の疾患の治療
〈第14篇〉鼻出血の治療
〈第15篇〉耳鳴の治療
〈第16篇〉内耳性眩暈の治療
〈第17篇〉眼疾患の治療
〈第18篇〉眼保体操
〈第19篇〉皮内鍼について
鍼灸医療・東洋医学の情報月刊誌である『医道の日本』に連載中の、『東洋医学見聞録』を収録した本です。
著者の西田皓一先生は、西洋医学の医師でありながら、臨床に積極的に鍼灸治療を用いている先生です。西田皓一先生は、1937年生まれで、1963年神戸医科大学卒業。1977年西田順天堂内科(高知県南国市)を開業し,現在に至り、2004年高知大学医学部非常勤講師、2006年高知大学医学部臨床教授を歴任しています。 西田先生は、40年前に西洋医学の限界を感じ、それから東洋医学・鍼灸というものに出会い、現在に至るまで鍼灸・東洋医学、そして西洋医学を併用しながら臨床を行っています。
本書は、上に示しましたように、様々な疾患を取り上げています。上・中・下巻全てを揃えれば、初心者の場合でも、鍼灸治療を受けに来る患者さんの多くに、条件付きではありますが、一定の(ある程度の)対応はできるようになるのではないでしょうか。
西田先生の手法は、経絡治療・本治法といったものではなく、昔から言い伝えられている特効穴や、経絡の走向部位による穴、奇穴、阿是穴などを選穴し、そこへの鍼灸治療がメインです。このような標治的な選穴に限界を感じて、本治法の修得に進んだ者にとっては正直物足りなさもありますが、鍼灸学校に入りたての人や、鍼灸院を開業して間もない人にとっては、このような標治的な治療が集められているのは、とてもありがたいものだと思います。また、本治法を修得しようとする方にとっても、こういった本は、経絡のつながりを理解したり、臓腑の関係を理解するためにも役に立つことがあると思います。
また、西洋医学的な見解なども知ることもできますし、西田先生の臨床経験から感じてきた経験談も、初心者・中級者には重宝します。
もともと鍼灸・東洋医学の月刊誌『医道の日本』の先頭に連載されているものですので、読みやすく、写真も豊富なので理解もしやすい本ですので、鍼灸・東洋医学を学ぶ人はもちろん、西洋医学で鍼灸や東洋医学を学びたいと思っている人への入門書としても好著だと思います。
参考











著者の西田皓一先生の詳しいプロフィール
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