『陰陽五行説 その発展と展開』
著者 根本幸夫・根井養智著
発行 じぼう
価格 3864円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
陰陽五行説の成り立ち、歴史、文献などが幅広く網羅されています。医学へ応用された陰陽五行学説の解説はもちろん充実していますが、それ以外の解説も充実していますので、一冊はそろえて読んでおきたいものです。
古典的な鍼灸治療をマスターするためには、五行の概念をうまく使う必要があります。五臓の五行、感情の五行、五行穴など、臨床において活用される五行は多く、五行と鍼灸臨床は切っても切れない関係にあります。五行といいますと、五角形の相生相克の関係をすぐに頭に思い浮かべると思いますが、教科書レベルの理解では、それを応用するところまでなかなかたどり着けるものではないと思います。そのため、五行はよく出来た考え方ではあると知りつつも、臨床ではあくまで参考程度にしか取り入れない鍼灸師も多く、また、参考にするくらいならまだいいほうで、完全に迷信として捨て去ってしまう鍼灸師の方も少なくありません。たしかに五行とは、もともと自然哲学、思想的な部分が強いため、現代科学的な医学とのギャップがあると思うのも仕方のないことだと思います。しかしまた同時に、五行の概念を臨床に取り入れて、大きな成果を上げている先生も多く、また古来より受け継がれてきた東洋医学の歴史が、五行の有用性を無言のままに訴えているように思えてなりません。
本書では、五行思想の深い考察が最初の章でなされており、どのような背景で五行という考え方が発生したのかを、『淮南子』『呂氏春秋』『易経』などの東洋思想の本を引用しながら説明しています。さらに章を進めて、五行思想と医学の結びつきを順序だてて解説しています。
本書では、五行論、陰陽論の発生、展開という歴史や基礎理論はさることながら、五臓六腑と五行説の関係も詳述されており、また、色体表の一行一行を解説しているので、五行を十二分に修得することができる、申し分のない一冊です。
『東洋医学・鍼灸を学ぼう!』では、次に『陰陽五行学説入門』 中村璋八・中村敞子共訳 たにぐち書店という本をご紹介しておきます。
どちらも五行学説を学ぶ本としてお薦めです。
『陰陽五行学説入門』
著者 中村璋八・中村敞子共訳
発行 たにぐち書店
価格 3150円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の基本である陰陽五行学説を、分かりやすくまとめています。古典的な鍼灸治療を学びたい方には、最初に読んでおきたいテキストです。
本書は題名通り、陰陽五行学説の入門書です。上に取り上げました『陰陽五行説 その発展と展開』 根本幸夫・根井養智著 じぼうと比較しまして、ページ数も薄く、五行の基本的な考え方を主に取り上げています。
東洋医学や鍼灸医学を学ぶ際に、どうしても身についておきたい考え方が、陰陽論であり五行論です。この陰陽五行は、とてもシンプルで分かりやすい考え方ですが、実際にどこまで有効なものか、どこまで治療に活かせるのかということになると、尻込みをしてしまう治療家の方も少なくありません。また逆に、陰陽五行を巧みに使うことが出来る治療家にとっては、これほど便利で、これほど有効なものはないとおっしゃることでしょう。
この本の原書は、内蒙古医学院中医系主編の『自学中医之道』叢書に含まれたものを翻訳したものです。原著は中国各地の中医学院の校閲を経た権威あるもので、内容は、現在中国で学ばれているスタンダードな五行学説が書かれています。そのため、内容はまさにベーシックで、“入門”となっています。しかし、入門といいましても、内容はとても深く、参考に出来る箇所は入門者のみならず、中級者以上にとっても多くあります。また、ある程度学問が進み、確認するためにもう一度読んでみると、新たな発見や気づきがあるのも、本書が良書であることを示しています。
訳者はすでにご紹介している『五行大義(上)』『五行大義(下)』の中村璋八先生と、その奥様でいらっしゃる中村敞子先生のよるものです。陰陽五行学説の入門書としてぜひとも一読しておきたいものです。
『やさしい中医学入門』 関口善太著 東洋学術出版社
著者 関口善太
発行 東洋学術出版社
価格 2730円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
必要最小限ではありますが、必要不可欠な東洋医学の基礎理論を、図やイラストともに分かりやすく解説している好著。ごく初歩的な方から、少し勉強が進んだ方にとっても全体を把握しなおしたり、確認するのにいい本です。
東洋医学・鍼灸医学を理解し、実践していくためには、東洋医学の五臓六腑や気血営衛といった独特の生理学を十分に把握しておく必要があります。現代医学の理解と重なるところもたくさんありますが、重ならない昨日解剖学的なところは、特に注意して学ぶ必要があると思います。
五臓六腑に関していえば、例えば「心は神を蔵す」「心は血脈を主どる」など、それぞれの臓器にいくつかの働きを定義しています。各五臓六腑の働きが異常になることで病気が起きますので、この働きを覚えておくことは、どれだけからだが悪い方向に傾いているかをしるための、臨床の基準になります。
この五臓六腑がそれぞれ持っている働きを覚え、理解することは割りと容易ですが、単体だけで起きる病は少ないので、これだけでは臨床に不十分です。ここからさらに進んで、五臓六腑がどのような結びつきをし、どのような働きを享受しているのかを網羅していくことが必要となります。例えば血に関してですが、「肝は血を蔵す」と言い、「脾は血を統制する」とも言います。血という身体の中を巡る物質に対して、肝と脾の両者がどのような関係でつながっているのかは、五臓六腑の単体の生理学だけでは理解が難しいところがあります。そこで、同じ血に対して、肝と脾の両者がどのように関わっているのかを把握していかないといけません。このような微妙な違いを理解、把握することは、そのまま臨床での病気の把握と治療方法の選定につながっていきます。
本書は各項目に、四角で囲った要約があり、次に解説文、そしてその解説文をまとめた各臓器間の関係図がついております。この関係図は、体全体を把握するためのチャートです。東洋医学・鍼灸医学の理解を深め、臨床に役立つ知識を身につけるために、文章を読みながら、この図もしっかりと頭に入れることをお薦めいたします。
本書はタイトルに“中医学”という名称が入っていることからも分かるように、中医学を基礎にした解説です。中医学は、現在中国でスタンダードに学ばれている中国医学の基礎理論で、その体系に癖はなく、過不足なく学べますので、経絡治療の方でも、現代鍼の方でも、利用価値のある内容となっています。
『標準東洋医学』 仙頭正四郎著 金原出版
著者 仙頭正四郎
発行 金原出版
価格 4935円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の基礎理論を一通り学び、全体像を概観できるようになってから改めて読みたい東洋医学の基礎理論の本。立体的な理解の助けになります。
東洋医学・鍼灸医学の基礎理論は、一つの知識が独立しているのではなく、それぞれが関連しあいながら複層的な構造になっています。これは、東洋医学の身体観が、部分だけで見ているのではなく、常に身体全体を一つの有機体として見ていることに根ざしているからと言えます。
東洋医学・鍼灸医学を実践する臨床家として、基礎理論は常に頼りになるツールでありますが、一つ一つの知識が独立したままでは、机上の空論になってしまいます。独立した基礎理論の各論を、お互いにつなぎ合わせて、立体的に膨らませていかなくてはいけません。本書は、基礎理論を学び始めた初心者には難しい概念もありますので、ある程度全体像を把握できるようになってきてから参考にすると、より深く学ぶことができると思います。
基礎理論は、脈診などの診断学と、鍼灸の実技を結びつける橋渡し的な役割をします。十二分に身体に染み込ませるためにも、本書はかなりの効果を発揮してくれると思います。
お薦め度 ☆☆
タイトルには“初めて読む人のための”と銘打ってありますが、原文もなく、解説も簡単すぎるので、かえって初心者の方には読みずらく、古典の良さが伝わらないところがあります。かといって自分の勉強が進んだら読み応えがあるかというとそういう本でもありません。そういった意味ではお薦め度は低いです。
しかし、初心者用といえば定番の一冊として有名です。池田政一先生は、現在は経絡治療家として有名ですが、先生の初期の作品という感じで読んだらどうでしょうか。
池田政一先生の著書であれば、こちらをお薦めします。
『図解鍼灸医学入門-古典鍼灸の法則とその運用』
著者 蛎崎要・池田政一
発行 医道の日本社
価格 3255円(税込み)
お薦め度 ☆☆☆☆
東洋医学・鍼灸医学の臨床に必要な、最も基礎的な理論を、図とともにわかりやすく著した好著です。












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